直木賞の米澤穂信さん「投げた石が大きな池を作ったのかな」受賞を語る
第166回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)が19日、発表され、直木賞は今村翔吾(いまむら・しょうご)さん(37)の「塞王の楯(さいおうのたて)」と、米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)さん(43)の「黒牢城(こくろうじょう)」が選ばれた。米澤さんは受賞会見で「大変光栄に思います」と落ち着いた表情で語った。 【動画】第166回「芥川賞・直木賞」発表 砂川文次さん、今村翔吾さん、米澤穂信さんが会見
ミステリーは自分にとっての大事な軸足
米澤穂信さんは1978(昭和52)年岐阜県生まれ。2001(平成13)年の「氷菓」で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューした。 直木賞は3度目のノミネートでの受賞。「以前、ある編集者の方から『普通、池のあるところに石を投げるように小説を書いていくことが多いが、米澤さんは何もないところに石を投げるように書いていく。そこに池があるのかな、と思っていたら、自分の投げた石で池を作っていってしまう』と言われたことがありました。その時は大それたことを、と思わなくもなかったんでけども、今こうして一つの結果をいただいて、投げた石が一つ、大きな池を作ったのかなと思っています」 受賞作は戦国時代を舞台にしたミステリー。武将・荒木村重の城内で起こった事件の謎解きに黒田官兵衛が挑む、というユニークな筋書きだ。「書いている時は、はたして16世紀の日本を舞台にミステリーを書いて、面白いと思っていただけるのか思い悩んでいたんですが、編集者の方には『いや、それはぜひ書いてください』とおっしゃっていただいた。(その意見は)正しかったなあと思っています」 デビューから今年で21年。「この賞をいただいたことを、ここまでは間違ってなかったんだよ、というメッセージと受け止め、次の仕事を始めていきたいと思っています」と神妙に語る。 今後もミステリーを書き続けるのか。「いろいろ書きたいことはありますが、その中のどれが浮かび上がってくるのかは自分でもコントロールできないところがあります。もし、今度の小説が絶対にミステリーを必要としない場合、それでもミステリーを書くのかどうかは自分でも分からない。ただ、ミステリーは自分にとっての大事な軸足であり、柱であるということは一生変わらないと思っています」 (取材・文:具志堅浩二)