わが子の亡骸を頭にのせて運ぶ母シャチを目撃、悲しみの表れなのか、専門家の見解は
「とても心配」なペースの赤ちゃんシャチの死
タレクアが属している「サザンレジデント」と呼ばれる群れは、魚をエサとし、特にマスノスケ(キングサーモン)を好んで食べる。ところが、マスノスケが近年減っているせいで、群れの出生率が低下し、個体数は減少している。サザンレジデントは、北太平洋東部の定住型シャチのうち、南部に生息する群れだ。 「妊娠しないとか、妊娠を継続できないというわけではありません。妊娠後期での問題や死産だったり、生まれてすぐ死んでしまったりするのです。野生では赤ちゃんが死ぬのはよくあることですが、サザンレジデントではそのペースが速いのでとても心配です」とワイス氏は言う。 タレクアが再び子どもを失ったことは、地元米ワシントン州の先住民族であるルミ族にとっても悲しい出来事だった。ルミ族の団体「ソシロ」の共同代表を務めるカート・ルッソ氏によると、ルミ族は数千年前からサザンレジデントと交流を持ち、群れを親族のように思ってきたという。 「サザンレジデントは『スカリチャハ』と呼ばれる一族です。それが彼らの名前です。単なる動物ではなく、われわれの親戚なのです。親戚の子どもたちが無意味に死んでいっているのです」
文=Michelle Martin/訳=荒井ハンナ