いまだ謎に包まれる「火星の質量が小さい」理由、原因究明に挑む惑星科学者たち
火星は依然として本当に謎に包まれているが、それはほとんどの人が考える理由からではない。かつて表面水や海洋、生命が存在したかどうかについて意見が分かれているのは確かだ。だが、火星の質量が地球や金星に比べて小さいことは、何十年も惑星科学者の頭を悩ませてきた大きな謎となっている。 火星の質量は地球の10分の1ほどしかないことから、米カーネギー研究所の惑星科学者ジョージ・ウェザリルはこの謎を「小さな火星」問題と呼んでいる。なぜ火星が地球や金星に比べてこれほど小さくなったのかを説明しようと、これまでに仮説がいくつか提唱されてきた。だが、仮説が行き詰まると、それを敢えて全面的に支持しようとする惑星科学者はほとんどいないのだ。 米ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)の惑星科学者マシュー・クレメントは、取材に応じた電子メールで、原始惑星を地球や金星くらいの大きさにまで成長させるほど十分な物質が原始惑星系円盤内にあるならば、同じ大きさへの成長を可能にしたかもしれない同程度の量の物質が火星の近くに存在しなかった理由については不明だと述べている。 火星が水を失い、ついには生命存在可能な状態を維持できなくなったのは、火星の小さな質量がカギとなる要因になっているのだろうか。 質量は惑星の唯一の最も基本的な特性だと、仏ボルドー天体物理学研究所の天体物理学者ショーン・レイモンは、取材に応じた電子メールで述べている。 火星の地質学的な歴史と水の消失はどちらも、ほとんどがその質量に端を発していると、レイモンは続けている。 ■質量の問題 惑星の質量は、主星からの距離とともに主要な要素であることは確かだと、米カリフォルニア大学リバーサイド校の惑星地球物理学者スティーブン・ケーンは、取材に応じた電子メールで述べている。火星の大きさが小さいことにより、大気の供給源となる地質学的活動と火山活動の両方の継続期間が大幅に制限されたと、ケーンは指摘する。さらに、質量が小さいことで、太陽風による大気のはぎ取りの影響を受けやすくなったという。 火星は太陽系の歴史の非常に早い段階で、その質量の半分に達していた。 2つの惑星に大きさの差異が生じた原因が何であれ、それは太陽系の歴史の非常に初期の段階、おそらく初期の数百万年以内に生じていなければならないと、APLのクレメントは指摘している。