日本人の腎臓は生まれつき弱い? 寿命を左右する腎臓の働きと大問題(専門家が監修)
なぜか地味な印象の腎臓は、実は全身の健康に関わる陰の功労者だ。きちんと向き合わないと知らぬ間に機能が衰える。かけがえのない腎臓について知り、いつまでも元気に働いてもらおうじゃないか。[取材協力/川村哲也(東京慈恵会医科大学客員教授)]
教えてくれた人:川村哲也さん
かわむら・てつや/腎臓専門医。東京慈恵会医科大学客員教授、同腎臓・高血圧内科客員診療医長。腎臓病の臨床と研究に長年携わるほか、患者向け「腎臓病教室」を開くなど腎臓病の正しい知識の啓蒙に努める。医学博士。
腎臓が寿命を決めている
腎臓は地味な臓器だが、その働きぶりは全身に影響を与える。それどころか近年、腎臓が寿命にも深く関わるという説が有力。 「腎臓こそ寿命を決めているのです」(東京慈恵会医科大学客員教授で腎臓専門医の川村哲也先生) 腎臓と寿命の関わりを知るうえで鍵を握るのが、リン(P)というミネラル。大半は体内でリン酸カルシウムとなるほか、脂質と結びついて細胞膜を構成し、細胞の基本エネルギーのATPも作る。 このようにリンは不可欠だが、一方で毒性を持つ。食事で摂ったリンは、リン酸カルシウムがタンパク質と結合した物質(CPP)となり、血液に溶ける。CPPの多くは骨に運ばれるが、過剰なCPPは血管にストレスを与える。血管をセメントのように固めてしまい、動脈硬化を誘発。そして動脈硬化は、心臓病や脳卒中といった死を招く病気のリスクを高める。 これが腎臓が寿命を決めるとされる所以。実際、縦軸に動物の寿命、横軸に血中のリン濃度を取ると、右肩下がりの直線を描く。つまりリン濃度が低いほど、寿命は長い。 ヒトは動物界では長命だが、それは腎臓のおかげ。腎臓が余分なリンを排泄し、CPPの害を最小限に抑えるから長生きなのである。 腎機能が落ちるとリン排出が滞り、CPPによる動脈硬化が進む。CPPは腎臓で濾過を行う尿細管にもダメージを与えるため、腎機能が一層落ちるという悪循環に陥る。リンを多く含む加工食品などの過食を避け、腎臓をケアしよう。