日本人の腎臓は生まれつき弱い? 寿命を左右する腎臓の働きと大問題(専門家が監修)
低出生体重児の割合
2500g未満の低出生体重児の割合。9.4%前後で高止まりしており、厚生労働省でも「優先して取り組むべき栄養課題」だと評価している。
日本人の7人に1人は腎臓がヤバい
さまざまな理由で、腎機能が慢性的に低下する病気を「慢性腎臓病(CKD)」と呼ぶ。 腎臓が寿命を決めるとしたら、CKDになると寿命も短くなる恐れがある。CKDと聞いてもピンと来ないかもしれないが、いまあなたはそのとば口に立っているのかもしれない。 「CKDの日本国内の推定患者数は1330万人。予備群を含めると2000万人近くになり、7人に1人の腎臓が危険水域にあると考えられます」 塩分の過剰摂取や高血圧はもちろんリスクだが、CKDは自覚症状に乏しく、CKDか否かは体調では判断できない。そこで頼りになるのは「GFR」の数値。 GFRは「糸球体濾過量」の略。腎臓でフィルターの役割を果たしている糸球体が、1分間にどれだけの血液を濾過し、尿を作れるかを示す。これが、腎機能を測る物差しだ。健常者のGFRは、毎分100mL/1.73㎡前後。GFR60未満は腎機能が健常者の60%未満まで落ちたという意味であり、それが続くと軽度のCKDを疑う。 GFRを実際に測るのは難しいので、健康診断などでは血清クレアチニン量、年齢、性別から、GFRを推定する。これを「推算糸球体濾過量(eGFR)」と呼ぶ。 本来タンパク質は腎臓で再吸収されて尿には出てこないが、CKDではタンパク質が尿に漏れ出る。このため、尿タンパクの有無などもCKDの貴重な指標となる。
慢性腎臓病の重症度分類
GFR区分による重症度の分類。緑ステージを基準に、黄色、オレンジ、赤の順にステージが上がり、総死亡や心血管死亡率などが上昇。この他、糖尿病や高血圧や腎炎などの疾患、蛋白尿の区分などでリスクは評価される。
「心腎連関」って知ってる?
肝臓が悪くなると腎臓も悪くなる「肝腎症候群」という現象が存在する。臓器は決してバラバラに働いているわけではなく、相互に影響を及ぼし合っているのだ。加えて腎臓は心臓とも関わる。 昔からドクターの間では、腎臓が悪い人は心臓病(心血管疾患)を起こしやすく、逆に心臓が悪い人では腎機能も低下しているタイプが多いことが知られていた。 「その後、この心臓と腎臓の関わりを“心腎連関”と呼ぶようになり、両者の関連の本格的な研究が始まりました」(川村先生) 現在では明らかな心腎連関の一例として、CKDの重症度が上がるほど、心血管疾患の発症率とそれによる死亡率が高まることがわかっている(下グラフ参照)。 腎機能の指標となるGFRの値が悪くなればなるほど、心血管疾患の発症率は上がり、そのリスクは最大で健常者と比べて3.4倍まで上昇すると判明しているのだ。心腎連関のメカニズムは、まだ完全に明らかになったわけではない。でも、その主なシナリオは、次のように考えられている。 腎臓と心臓に共通して影響を及ぼすのは、交感神経と副交感神経からなる自律神経とホルモン。血管を縮めて腎臓に負担をかける交感神経や、腎臓が分泌するホルモンが、心臓のストレスになる場面は少なくない。代表的なのは、血圧を上げるために腎臓が分泌するレニンというホルモン。血圧の上昇は、心臓にとって決して歓迎すべき話ではない。腎臓も心臓も仲良く十分にいたわろう。