日本人の腎臓は生まれつき弱い? 寿命を左右する腎臓の働きと大問題(専門家が監修)
腎臓の主な働き
・血液を濾過して尿を作る。 ・体内の水分量を調整する。 ・血液のpHを弱アルカリ性に保つ。 ・造血作用(赤血球を増やすホルモンを出す)。 ・血圧調整(血圧を上げるホルモンを出す)。 ・活性型ビタミンDを作り、カルシウムの吸収を促進。
そもそも腎臓とは?
腰椎の両側に左右1個ずつあり、長さ10~12cm、幅5~6cmほど。中央内側に「腎門」という凹みがあり、血液を運ぶ腎動脈と腎静脈、腎臓から尿を出す尿管に通じる。表層を皮質、内側を髄質と呼び、円錐状の髄質と周辺の皮質で腎葉という基本単位を作る。
日本人の腎臓は生まれつき弱い?
腎臓の基本ユニットはネフロン(イラスト参照)。誰しも腎臓を2個持っているが、1個当たりのネフロン数には25万~200万個と幅があり、個人差が大きい。 ネフロンは加齢とともに減り、腎機能の低下に直結する。ネフロン数が多いほど、加齢などによる減少に対するバッファー(予備力)が大きく、歳を重ねても腎機能は保たれやすい。 ところが、日本人は欧米人と比べるとネフロン数が3分の2ほどに留まるという報告がある。日本人の腎臓は予備力が低いのだ。 加えて配慮が求められるのは、生まれたときの体重が2500g未満の低出生体重児。 「低出生体重児は一般的にネフロン数が少ないと指摘されており、将来の腎臓病のリスクが高いと考えられます」 欧米の研究では出生時の体重が1kg軽いと、ネフロン数は約26万個少なくなるという。日本の低出生体重児は、1975年以降右肩上がり。現在では全体の9.4%を占めており、先進諸国でもトップの高さだ。 医学の進歩で、低出生体重児でも元気に育つという喜ばしい面もある一方、妊娠中も体重をなるべく増やしたくないという女性の痩身信仰の影響も指摘される。
ネフロンの働き
動脈から枝分かれした毛細血管は糸球体という固まりを作り、ボーマン囊に包まれる。ボーマン囊+糸球体=腎小体。ボーマン囊から出る尿細管+腎小体をネフロンと呼ぶ。糸球体は血球やタンパク質を濾過して原尿を作り、尿細管は原尿をさらに濾過。腎小体に近い近位尿細管で水分、ブドウ糖、アミノ酸、ビタミン、ナトリウムなど、遠位尿細管で水分やナトリウムなどを再吸収。原尿からできる尿は1%だ。 胎児のネフロンの生成は、お母さんのお腹にいる間に始まり、妊娠36週目までに終了。それ以降は増えない。ネフロンの生成途中で生まれる早産児でも、腎臓病のリスクは高くなると考えられる。