サッカー大国・ドイツを覆う危機感…子どもたちに「とにかく、いっぱいボールに触れさせる」ことで判明した「衝撃の効果」
「フニーニョ」の絶大な効果
「フニーニョ」の効果については、論理的で詳細なエビデンスがある。 たとえば、3対3のフニーニョを中心としたトレーニングと、7対7を中心にしたトレーニングとで、どのくらいの差が生じるのか。 フニーニョを中心としたトレーニングの場合、1ゲームにおける1人あたり平均で、ボールアクションが200回、サッカー的な決断をする機会が200回、競り合いが100回、シュート機会が25回あるという。 これが7対7のゲームになると、ボールアクションは50回、サッカー的な決断をする機会は50回、競り合いが30回、シュート機会が5回と、いずれも格段に減少しており、きわめてわかりやすい差が現れるのだ。 さらに、これらのトレーニングをいずれも週2回、約10年間続けたると計1000回のトレーニングをおこなうことになるが、その場合の数値で比較するとどうなるか。
3~4倍の経験の差に
フニーニョの場合は、ボールアクションが20万回、サッカー的決断が20万回、競り合いが10万回、シュートが2万5000回に達するのに対し、7対7の場合は、ボールアクション5万回、サッカー的決断5万回、競り合い3万回、シュート5000回にとどまってしまう。両者はざっと、3~4倍の経験の差を生むことになる。 ちなみに、サッカーを始めたばかりの子どもたちには、3対3の前に2対2でのトレーニングが推奨されている。 ドイツと国境を接するベルギーサッカー協会でも、小さい子どもたちは当初、2対2でのトレーニングからスタートする。ボールに絡む、ゴールに絡むことが、子どもたちにとってのサッカーとの触れ合いの始まりだからだ。
補欠の子がいてはいけない
小学校低学年でフニーニョに慣れたら、3対3+ゴールキーパーにステップアップし、以降は年齢が上がるごとに、ピッチサイズとプレー人数、プレー時間を少しずつ増やしていく。 試合は、参加する選手たちみんなのためのものだ。試合の日には、すべての選手が試合に出られるようにオーガナイズするのが必須条件となる。小学校年代においては、補欠の子がいてはいけないのだ。 「両親の理解を得ることは非常に重要なポイントです。なんのための試合なのか、どんな意図があっての取り組みなのかをていねいに説明することが、すべての指導者に求められます。そして、あくまでも子どもたちのプレーの邪魔にならないよう、サポート役に徹することをつねに伝え続ける必要がある。我が子のためにと必死の声かけをすることが、必ずしも子どもたちの成長のためにはならないことを何度も伝えることも重要です。継続的に伝えることなく、浸透していくことはありません」(ヴォルフ) 本当の意味での「プレーヤーズファースト」とは、選手の成長を中心に据えた考えのことだ。成長に欠かせないのは実践の場だ。 では、「実践の場」とはなんだろう? こう問いかけるとき、自然と思い出す言葉がある。