大麻に関する最近の5つの発見、心臓病や脳卒中、依存症など「害」の証拠が続々
鎮痛の効果への疑問、妄想や繰り返す吐き気などのリスクも
大麻に対する規制が緩和されている米国では現在、およそ5人に1人が大麻を使用している。にもかかわらず、その健康への影響については、実は長い間わからない点が多かった。しかし今、大麻に関して、これまで以上に多くのことが明らかになりつつある。 ギャラリー:人類が地球を変えてしまったと感じる、空から撮った絶景 写真23点 大麻については、すでに多くのことがわかっているのではと思う人もいるかもしれない。なにしろ人間は1万2000年前から大麻を栽培し、少なくとも2500年前から精神活性物質として使ってきたのだ。一般に、大麻は痛み、吐き気、筋肉のけいれん、食欲不振、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療において、医薬品に代わる安全で自然な手段になると考えられている。 事実として、大麻ががんによる痛みの緩和に役立つという証拠はある。また、米食品医薬品局(FDA)は、抗がん剤による吐き気や嘔吐を和らげることを目的とした2種類の合成カンナビノイド(大麻に似た作用を示す合成物質)を承認している。 ところが今、大麻は一部の人々が考えているほど無害ではないことがわかってきた。医療研究における大麻への規制が緩和されたおかげもあり、科学者らは、大麻の使用に伴うデメリットが想定以上に大きく、肺、心臓、消化器官、精神衛生に長期的な脅威をもたらす可能性があることを明らかにしつつある。 これはしかし、大麻が慢性的な痛みや吐き気、食欲不振などに効果がないと言っているわけではない。単に、それを確実に証明する研究がまだ行われていないというだけだ。ここ数年でわかってきた大麻に関する知見を以下にまとめた。
1. 大麻には痛みの緩和に効果があるのか?
米国では、医療用大麻を使う理由として、特に多くの人が痛みの管理を挙げているが、研究では、一般の人々における痛みの軽減に関して、大麻の効果はまちまちであることが示されている。 これまでに行われた信頼性の高い研究では、カンナビノイドが痛みを十分に和らげるという証拠は見つかっていない。そのため、痛みの研究で権威のある国際疼痛学会(IASP)は2021年、痛みの治療に大麻を推奨しない決定を下している。 問題を複雑にしている要因のひとつは、特定の種類の痛みはプラセボ(偽薬)効果に特に影響されやすい点だ。 2022年11月に医学誌「JAMA Network Open」に掲載されたレビュー論文では、プラセボが本物のカンナビノイドと同じような痛みの緩和をもたらすことが示されている。大麻には痛みを和らげる効果があるように見えるのは確かだが、そうした働きの一部は、プラセボに起因している可能性があるということだ。 「何かが有効なのかどうかを知るだけでは不十分です。なぜ有効なのかを知らなければ、患者に最高の治療を施すことはできません」と、スウェーデン、カロリンスカ研究所疼痛神経画像研究室のカリン・ジェンセン氏は述べている。