サッカー大国・ドイツを覆う危機感…子どもたちに「とにかく、いっぱいボールに触れさせる」ことで判明した「衝撃の効果」
幼稚園年代から取り組む「フニーニョ」
そこでドイツサッカー協会では、より具体的な数字的指針を出そうと、U8からU16までの1週間の1人あたりの実質のプレー最適時間を48分以上に、U17以上では32分以上に定めている。つまり、ゲーム形式においてボールに触っている時間、ゲームに関わっている時間のことだ。 サッカーは、ボールに触れていない時間のほうが圧倒的に長いスポーツだ。プロの試合では、90分間のゲームタイムのうち、1人あたりのボール保持時間は平均で2分に満たないとされている。 ボールに触れていない状況も含めて「サッカーというゲームである」という認識のもとに、ポジショニングや戦略的なタスクを学ぶことが欠かせないし、同様の認識に基づく戦術的な駆け引きについても、幼少時からの積み重ねが必要なのはいうまでもない。 「ボールに触れていない状況が長いのだから、子どもたちがボールに触れなくてもしょうがないよね。サッカーってそういうスポーツだからね」ではなくて、どういうオーガナイズとフォーマットでトレーニングや試合をおこなえば、子どもたちがもっとボールに触れながら、試合に関わりながら、戦術的な駆け引きを学べるようになるのかを考えることが重要なのだ。 つまり、ゲーム理解力や状況把握力、持続力や集中力、負荷に対する耐性力を身につけながら、子どもたちに「もっともっとサッカーがしたい」と思ってもらえる環境を整えることが、大人の役割だといえるだろう。 それを実現する1つの方法として、ドイツで幼稚園の年代からおこなわれているトレーニングがある。その名も「フニーニョ」とは、いったいどういうものなのか。
「4つのゴール」を置く
ドイツにおいて、幼稚園から小学校低学年の年代の子どもたちに対しておこなわれている「フニーニョ」とは、次のようなトレーニングだ。 コンパクトサイズに区切ったグラウンドにミニゴールを4つ置き、3対3のゲーム形式で試合をおこなう。どちらのチームにもゴールが2つあるためさまざまな駆け引きが生まれやすく、3人ずつと少人数どうしのためにすべての子どもが目いっぱい動いてプレーできる結果、プレーに関わる頻度が格段にアップする。 「トレーニングにおいて、ある1つのやり方を採用することは、それとは別のトレーニングを1つおこなわない決断をしたということと同じです。あらゆるトレーニングをすべて実施することは誰にもできません。だからこそ、『どんな』トレーニングを『なぜ』、『どのように』「どのくらい』の頻度でおこなうかを正しく決断することが大事なのです」(ヴォルフ)