サッカー大国・ドイツを覆う危機感…子どもたちに「とにかく、いっぱいボールに触れさせる」ことで判明した「衝撃の効果」
無料で使える「トレーニングアプリ」
ドイツでは、2000年初頭におこなわれた育成改革によって、グラスルーツ(草の根)レベルにおけるトレーニングにおいても、スタンダードレベルがかなり向上してきている。 たとえば、町クラブのお父さん・お母さんコーチであっても、ドイツサッカー協会が無料で提供しているトレーニングアプリを使うことで、目的に応じてうまく整理されたプログラムにしたがってトレーニングを組むことができる。オーガナイズからバリエーションのつけ方、コーチングポイントまで、詳しく説明されているからだ。
ドイツが推奨する「新しいトレーニング」
ただし、サッカーはそもそも“総合力”が求められるスポーツだ。 フィジカル、スキル、戦術、認知、メンタルの各要素に加え、社会的な能力すべてが必要となる。 この点で、従来のトレーニングアプリで紹介されているプログラムは、《ウォーミングアップ》《トレーニング1》《トレーニング2》《ゲーム》で構築されているものがほとんどだ。一般的といえば一般的なやり方にすぎない。 実際のサッカーにおいて求められる総合的な能力、そして子どもたちの「サッカーをしたい!」という思いに応えるためのアプローチという視点から考えたときに、結局のところ、ゴールを置いたゲーム形式の練習以外に、これらをフォローアップできるトレーニングはない、というのがドイツサッカー協会の考えだ。 そうした観点から、ヴォルフを中心とするドイツサッカー協会が推奨している新しいトレーニングプランがある。いったいどういうものなのか。
少人数のゲーム形式
ドイツサッカー協会が推奨する新しいトレーニングプランとは、1対1から4対4までのゲーム形式をメインに据えたものだ。 少人数のゲーム形式にすることで、「個々の選手のプレー機会やインテンシティの高さ、ゲーム内でのプレーの反復頻度の高さを提供できる」というのが、推奨される理由だ。 たとえば、10対10でゲームをおこなうよりも、ピッチを2分割して5対5のゲームを2組でおこなうほうが、選手それぞれのボールに触れる時間と頻度、プレーに関わる頻度が大幅に向上する。 「今日はゲーム形式を30分やったから、子どもたちも楽しかっただろう」 指導者はとかく、そんな振り返りをしてしまいがちだ。だが、単に30分のゲーム形式でトレーニングをおこなっても、実際にボールに触った回数や頻度、あるいは、ボールに触ってはいてもゲームに関わりのあるプレーができた回数や頻度が少なければ、子どもたちが「サッカーをやった気分」に満たされて家に帰ることはない。