道東唯一の百貨店「藤丸」閉店から2年。「大好きな藤丸を守りたい」再建誓う新チーム2030年再オープン目指す 北海道・帯広
「藤丸さん」を廃墟にしたくない
3人の中で唯一地元出身である山川さんには、藤丸に対して特別な思いがある。 「私の実家は藤丸のすぐ近くで、母や祖母は晩ごはんの買い物も洋服を買うのもすべて藤丸でした。私も藤丸の前を通って通学したり、学校帰りに友達とおやつを買ったり。毎日のように藤丸を見て育ちました。ある年代以上の帯広市民なら、おしゃれして家族でごはんを食べに行ったとか、『藤丸さんの包装紙』に包まれたお中元やお歳暮をいただいたとか、藤丸がにぎやかだった時代の記憶が必ずあると思います。
それが20年ぐらい前かな。少しずつにぎわいを失って、『なんか残念だよね』っていう感じをみんなが共通認識として抱くようになりました。ただ、自分たちでそう言うのはいいけれど、よその人から言われると家族の悪口を言われたみたいでイラッとくる。やっぱり私たちは藤丸が大好きなことに変わりはなかったんです」
「藤丸を廃墟にしたくない。これは十勝に住むみんなの願いです」という村松さん。 「中心部の百貨店が潰れて、誰も手を出せないまま放置され、街がむしばまれていった事例を目にしてきました。みんなが大好きなはずの藤丸が廃墟となって、帯広までもが沈んでいくのは本当につらいことです。だからそれだけは避けたかった。 再建には3つのステップがあります。1つめのステップは私的整理。これは米田さんたちの活躍で成功しました。2つめのステップはこの建物をどうするか。そして3つめはどう再建するか。2つめと3つめは一体で、さまざまな可能性が考えられました。たとえば建物を改修するのか建て直すのか。建物の中身はどうするか。藤丸の価値は何か。まちの人は何を望んでいるのか。本当にさまざまな角度から検討を行いました」
新コンセプトは「上質でうれしい十勝と出逢える」
2024年8月、2年余りにわたって行われた私的整理が完了し、2024年10月に再建計画が発表された。従来の建物を解体して新築し、2030年ごろ再オープンする計画だ。予定では2025年夏に解体作業を始め、2027年から新施設の建設に着手する。 市民にとって思い入れのある建物だけにスクラップ&ビルドは少々意外だった。その理由を村松さんはこう説明する。 「調査したところ建物は相当老朽化が進んでいました。2024年1月に能登半島地震が発生しましたが、巨大地震の可能性を考えれば改修よりも新築が一番の安全対策になります。また、改修の場合は延床面積も変えられず、新しい事業を考える上で多くの制約が生じます。新築であれば50年、70年、うまく使えば100年もたせることができるかもしれない。『藤丸』の名前を長きにわたってつなげていくには解体・新築がベストと判断しました」 再建後の業態は、百貨店ではなく複合商業施設を予定する。新しい建物の設計はこれからだが、地下1階から地上2階までは藤丸株式会社が運営する「藤丸」の店舗が入ることが決まった。上層階にはホテルが入るのか、オフィスや住居が入るのかはこれからの検討となる。
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