道東唯一の百貨店「藤丸」閉店から2年。「大好きな藤丸を守りたい」再建誓う新チーム2030年再オープン目指す 北海道・帯広
社員みんなに背中を押されて
「まさかと思いましたよ」 村松さんは米田さんから新会社の社長就任を打診されたその日のことをこう振り返る。 「百貨店に関して素人である私に、新しい藤丸の代表という話が来ることは想像もしていませんでした。米田さんからはこれまでのいきさつを含め、いろいろな話を聞きました。30代の青年実業家が、私的整理に向けてこんなすごいことをやっていると知って驚きました。その米田さんから『私たちは地方創生ベンチャーとしてさまざまな再建を手がけてきましたが、これがいよいよ本丸です。藤丸再建を一緒にやってほしい』と懇願されました。
これは受けざるを得ないなと思う一方、迷いもありました。それで、最後にうちの幹部を集めて聞いたんです。『新しい藤丸を再建する会社の代表を依頼されているが、みんなはどう思う?』。そうしたら間髪入れずに『ぜひ受けてくれ』と言われました。彼らはほとんどが地元、十勝の出身です。十勝・帯広のランドマークである藤丸が閉店するというニュースは、彼らにとっても残念で悲しいことだったんです。『村松さんが社長を引き受けることはわれわれにとっても誇りだ』、そう言ってくれました。それで覚悟が決まりました」 新会社の顔は決定した。あとは再建計画の中身だ。村松さんは自身も参加する帯広市中心市街地活性化協議会の副会長で、空き店舗活用やまちづくり事業に詳しい山川さんに「手伝ってほしい」と声をかける。
「村松さんからお話をいただいたのが2023年1月です。村松さんと米田さんがタッグを組むことを知り、この二人なら可能性が広がると感じていました。『がんばらせてください』とすぐにお返事しました」 こうして藤丸の再建を担う新藤丸チームが誕生。再建計画のかじ取り役を村松さんが担い、企画を山川さんが担当、米田さんを筆頭に株式会社そらが資金調達を担う体制が整った(※)。 ※藤丸株式会社は村松ホールディングスが51%、そらが49%を出資して2022年12月28日に設立。米田さんは取締役CSOに就任する。その後、株式会社そらは2024年2月に保有する全株式を藤丸株式会社に売却し、米田さんは取締役CSOを退任。スポンサー業務に徹するとして、藤丸株式会社との間で資金調達に特化したスポンサー契約を締結する 百貨店や大型商業施設といった規模の再建となると、大手デベロッパーが請け負ったり、行政主導で行われるケースも多い。そうした中で、「民間のベンチャーがこの規模の事業再生を行うのは珍しいとよく言われます」と山川さんは明かす。 「でも、十勝ってそういう地域なんです。民間主導でチャレンジする、十勝の人にはそういう気質があります。明治の開拓期、北海道のほとんどの地域が官主導で屯田兵が開拓を行ったけれど、十勝は違うんですね。依田勉三を中心とする晩成社が開拓団を組織して入植し、民の力で開拓を試みました。それ以来ずっと民間が主導して行政がサポートするというスタイルが十勝の伝統になっています」 「ただ……」と言葉を引き継ぐ村松さん。「私は民間だからとか、行政だからとか、そういう形式的なことよりも、米田さんや山川さんのように、若い力、女性の力が生きるダイバーシティのチーム・ビルディングをできたことが良かったと思っています。このメンバーだからこそ、よりお客さまの思いを吸い上げることができるし、将来を見据えて柔軟にものごとを考えられるでしょう。それが、このチームの一番の強みだと思っています」
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