海外メディアは”尾身提言”無視の東京五輪上限1万人の有観客開催決定に疑念…放映権持つNBCも「医療トップの意見と食い違う」
東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長、東京都の小池百合子知事、丸川珠代五輪相、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長による5者協議が21日、オンラインで行われ、五輪の観客の上限について政府の方針に沿い、会場定員の50%以内で最大1万人とすることを決定した。 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長ら専門家有志による提言では「無観客が最も感染リスクが少なく望ましい」とされていたが、それらの提言を都合よく解釈しての決定。海外メディアも揃って、新型コロナウイルスの感染拡大が収まっていない状況での有観客決定を疑問視した。 五輪の放映権を持つNBCは「東京五輪で新型コロナの感染拡大の懸念があるにもかかわらず一部の観客が許可される」と報じた。 「日本の当局(政府)は、パンデミックが悪化すれば無観客にできるとの警告を続けているが、この発表は、組織委員会が何人かの医療専門家からの批判に直面する中で有観客で大会を開催する方向に向かっていることを示唆している」と報道。 「この判断は”最も安全に五輪を開催する方法は無観客で行うことだろう”と先週勧告していた国の医療顧問トップの意見と食い違っている。尾身茂医師は、以前、パンデミックの最中に五輪を開催することは『普通ではない』と言及していた」と、分科会の尾身会長の提言が“無視”されたことに注目した。 さらに「元々2020年に行われる日程だった五輪大会は、この夏に延期されて7月23日に開幕が予定されている。だが、日本が新型コロナウイルスのさらなる感染拡大を防ぐことができるのか疑問視されてきている」と批判的に伝えた。すでに360万枚から370万枚のチケットが日本国民に販売されていることをつけ加えた。 なお、この記事の最後には、ご丁寧に「NBCニュースの親会社であるNBCユニバーサルは、今後の五輪に対する米国のメディア権利を所有している」と掲載されている。 USAトゥデイ紙も「医療専門家の懸念にもかかわらず、日本の観客が東京五輪で入場を認められる」との見出しを取り「東京五輪で観客を見ることができるが歓声は聞こえない模様だ」と報じた。 記事は「金曜日(18日)に日本政府の医療顧問トップの尾身茂医師は、“五輪開催で最も安全な方法は無観客での開催”と語った。尾身氏は、会場内での感染と同様、人が大会のために移動してイベント後に集まることで感染が広がる両方のリスクについて懸念を述べた」と尾身提言を紹介。 その上で、「だが、組織委員会は当初考えられていたよりもはるかに少ない数ながら観客を入れることを切望した。地元組織委員会はチケットの売り上げで収益を得ており、東京2020は8億ドル(約882億円)を当初の予算に計上していた。もしこれに達しなければ、それは日本人によって埋め合わされ、大会コストはさらに膨らんでいく。公式の大会コストは154億ドル(約1兆7000億円)だが、おそらく2倍以上とはるかに高くなっていると考えられている」と、上限1万人の有観客開催を決定した裏に財政的問題があることを示唆した。