製造業は回復基調でも…半導体「以外」の弱さ浮き彫りに
7月30日に経済産業省が発表した日本の6月鉱工業生産は、製造業の生産活動がなお底堅い回復基調にあることを示しました。しかしながら、同時に「半導体以外」の弱さを浮き彫りにする複雑な結果でした。以下で解説していきます。(第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミスト) 【グラフ】製造業の苦境脱出は? カギ握る「シリコンサイクル」は好転するか
鉱工業生産、生産高は増産基調を維持
まず全体の生産高は前月比+6.2%と2か月ぶりの増産となり、3か月平均では+0.7%と増産基調を維持しました。5月に大幅減産となった自動車工業が+22.6%と大幅に反発したほか、半導体製造装置の増産を主因に生産用機械が+8.9%と強く伸びました。 今後2か月の生産計画を問う「生産予測調査」に基づくと、7~8月は平均してみると概ね横ばいとなり、いったん増産傾向がストップする形となりました。半導体不足が招いた自動車の減産を通じて広範な業種に影響が及んでいる現状が浮き彫りとなりました。 もっとも、企業は過剰な在庫を抱えておらず、生産はなお伸びやすい状況にあることは認識しておく必要がありそうです。出荷と在庫の伸び率を比較した出荷・在庫バランスに目を向けると、6月は+23.5%と明確なプラス領域にあります(出荷高が在庫以上に伸びる状態)。通常こうした状態で生産は伸びる傾向にありますから、このまま生産が減少傾向に転じてしまう可能性は低そうです。 通常の景気後退局面では、需要見通しの下方修正が遅れることで、生産調整が追い付かず不良在庫が発生し、不況が長引きますが、コロナ禍においてはその発生初期段階において将来の需要減少が明白だったことから、生産に急ブレーキがかかり、不良在庫の積み上がりが抑制できた形です。このように在庫水準が低い状態にあることは朗報です。 また企業マインドを推し量る一助となる「アニマルスピリッツ指標(経産省算出)」に目を向けると6月は+5.3%ポイントとプラス圏を維持しました。この指標は、生産計画を上方修正した企業数の割合から下方修正した企業数の割合を引いて算出されます。現在の状況は、企業がワクチン接種に対する期待などから将来の需要増加に自信を深めつつあり、生産計画を引き上げる方向に動いていると考えられます。