実は底堅い日本株 考えられる3つの要因 “世界同時引き締め”からの逃げ場に?
米国株式市場に比べ、日経平均株価は意外に堅調だとの見方があります。これをどう考えればいいのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】米長期金利が高止まりでもなぜ株価が上昇基調なのか?
◇ 日本株の相対的な底堅さが注目されます。年初来の変化率(19日時点)は日経平均の▲8.2%に対して米S&P500種指数が▲18.1%、NASDAQが▲27.2%であり、特に4月以降は日本株の相対的優位が目立ちます。背景には(1)円安による日本企業の収益押し上げ期待、そして(2)グローバルに見た場合の日本のマクロファンダメンタルズの方向感があると考えられます。また先進国でほぼ唯一、(3)中央銀行が緩和姿勢を維持、むしろ強化している点も重要です。
(1)円安による日本企業の収益押し上げ期待
まず(1)の円安については、輸入物価の押し上げを通じて個人消費を圧迫するとの指摘が多く、そのプラス効果に疑問が持たれており評価は難しいのですが、対象を「日本株」に限定すればプラスである可能性が高いと考えられます。国内総生産(GDP)に占める製造業のウェイトが2割に過ぎないものの、円安の恩恵を享受しやすい製造業は日本株の約6割を占めます。言うまでもなく、株価指数は大企業の集合体ですから、大企業製造業に偏重した株価指数に円安の恩恵が強く発現するのは当然でしょう。 なお、19日に発表された4月の貿易統計によると、輸出金額は前月比+1.0%の7兆6295億円となり過去最高を更新。原数値の水準は過去2位、4月としては1位でした。通関時に適用されたUSD/JPYは122.8、前年比12.1%の円安でしたから、円安による売上高の嵩上げ効果が強く発現した形です。3月下旬以降の円安進行と時を同じくして日本株の底堅さが目立つようになったのは、単なる偶然ではないと筆者は考えます。
(2)日本のマクロファンダメンタルズの方向感
次に(2)マクロファンダメンタルズの方向感が上向きである点も大きいと考えられます。米国は高インフレに直面し、消費者マインド(ミシガン大学調査)はリーマンショック時のボトムに接近しています。GDPの約7割を占める個人消費の先行きは心もとない状況にあり、景気減速懸念が強まっています。そして欧州はウクライナ危機の影響が色濃く発現し、景気の息切れ感も強くなっています。企業景況指数(PMI)はサービス業が回復基調にある反面、製造業は低下に歯止めがかかっていません。サプライチェーン問題、エネルギーコスト上昇が経済活動を下押ししているのは明白です。 他方、日本は速報性と予測精度に優れた景気ウォッチャー調査が改善傾向にあるほか、PMIも上向き基調にあります。特にサービス業PMIは欧米との格差縮小を伴っている点で方向感の良さが目立ちます。