進む円高、ドル円相場の行方は? 3つのポイントから読み解く
円高が進んでいます。14日の東京外国為替市場の円相場は一時1ドル113円台に上昇しました。ドル円相場は今後どう進行するのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】目立つ日本株の弱さ 鍵を握るのは…データから見る
●「金利」は円安方向
ドル円相場の方向感は「金利」「量」「質」の3つに分けて考えることができます。「金利」は日米金利差。「量」は日米のおカネ、すなわちマネーストックや日米マネタリーベースの比較。「質」は日米のインフレ率格差、つまり購買力平価です。現状は「金利」が円安方向、「量」と「質」は円高方向にあります。 日米「金利」差は比較的短期の為替相場の決定において最もポピュラーな存在です。「おカネは金利の低い通貨から高い通貨へ移動する」という説明が多く、実際2021年以降の円安トレンドは米長期金利上昇(観測)がドル買いを促した面があります。 金利差の波形はどの年限の金利を比較するかによって異なりますが、大きくみれば、今後も拡大が予想され円安を促していく可能性が高いと考えられます。日米金利差次第でドル円相場は1ドル118~120円を目指す展開も考えられます。ドル円相場を過去6か月の日米10年債金利差で回帰分析して得られた数値は、米10年金利が1.8%になるとドル円相場は1ドル118円程度、2.0%になると120円程度です。
●「量」「質」は円高圧力
一方、おカネの「量」に着目すると、マネーストックの増加率は米国が圧倒しています。パンデミック前との比較では米国が40%程度、日本は10%程度と歴然。またかつてアベノミクス初期に注目を浴びた日米マネタリーベース比率、いわゆるソロス・チャートも米国の伸びが際立ちます。「おカネの量が少ない通貨が買われる」との説明に基づけば、現在は円高圧力が生じていることになります。今後はFRB(連邦準備制度理事会)の金融引き締めによって、米国のおカネの伸びが抑えられることでドル高方向の圧力が生じますが、パンデミック前との比較でみれば直ちに大勢を変えるものではありません。 また通貨の「質」を決定する購買力平価は、高インフレに直面する米国が劣っておりドル安圧力が生じています。消費者物価は米国が前年比7%程度、日本が1%程度。両国のインフレ格差が為替で調整されるとしたら単純計算で6%の円高・ドル安になります。米国の高インフレは年央頃にピークアウトが予想され、そうなれば購買力平価に基づく円高・ドル安圧力は和らいでいきますが、日米インフレ率格差の逆転はあり得ないでしょう。