安倍政権が残したものとは? アベノミクスの光と影
第3者機関をつくって「改革に挑め」
毎年の赤字幅を縮めるには大増税か大歳出カットしかない。が、選挙でそれを訴えれば不利と誰もやらない。これでは国家経営の視点の欠如、堕落した政治と言われても仕方あるまい。菅首相は消費増税について「10年間は行わない」という姿勢だ。ならば、二重三重行政の多い国地方の統治機構大改革により歳出カットを試みてはどうか。 国は赤字国債を安易に発行し、誰も負担の議論をしない。責任を負う態度もない。あたかもカネが天から降ってくるかのように。だが、そんなうまい話が世の中にあるはずがない。ツケの後始末はいつも国民に及ぶ。それが歴史だ。都合のよいMMT理論を振りかざすのは、改革の痛みから逃げる無責任政治の方便ではないのか。菅政権はそのことを継承してはならない。 これまで時代の大きな転換期には必ず外部有識者を総動員し臨時行政調査会(いわゆる「臨調」)を設置し改革を行ってきた。高度成長が始まり世の中が拡大する時期の第1臨調(1961~64年)は、新たな行政需要にどう対応するかを主眼に公団、事業団をつくり行政を拡大した。第2次石油ショック後、低成長時代が始まると第2臨調(いわゆる土光臨調、81~83年)で、「増税なき財政再建」を旗印に国鉄、電電の民営化や地方行革、官民の役割見直しなど行政を縮小する改革に注力した。 それから40年が経つ。時代は大きく変わった。人口大減少期に入った日本の行政はどうあるべきだろうか。12省庁体制、47都道府県体制、1718市町村体制、そして何層にわたる類似の出先機関、公共私の役割分担の見直しなど、この国を「賢く畳む」改革に挑む時が来ている。いま始まっている縦割り行政の弊害を除く、デジタル庁を創設し情報管理の一元化を図るという中央省庁内の改革ももちろん大事であり、進めることに賛成だが、同時に国と地方のあり方、相互もたれ合いで膨張する仕組みをリセットする視点も必要だ。中曽根政権以来の統治機構改革に挑んで欲しい。 これが菅政権の課題だ。単なる安倍政権の継承は国民に不幸をもたらす。