安倍首相が辞意会見で口にした「最長政権」の反省と課題、そして成果
歴代最長となる在職期間を記録した安倍晋三首相が、28日の記者会見で辞任する意向を表明した。持病である潰瘍性大腸炎(かいようせいだいちょうえん)の再発が理由だった。2012年12月に第2次政権が発足して以来、「政治において最も重要なことは結果を出すこと」と言い続けてきた安倍政権の7年8か月は、どのようなものだったのか。首相が会見で口にした反省と課題、成果から振り返る。 【動画】安倍首相が辞意を表明 持病再発「総理の地位にあり続けるべきでない」
●痛恨の極み
首相官邸で2か月半ぶりに開かれた会見は、歴代最長政権を担った安倍首相の辞意表明の場となった。 午後5時から始まった会見場の演台には、原稿を投影する「プロンプター」が用意されていなかった。その意図を問われた安倍首相は「今日はギリギリまで原稿が決まってなかった。私も推敲していた」と明かした。今年2月以降の新型コロナウイルス対策に関する首相会見と比べると短めな約12分間の冒頭発言では、自身の政権下で未解決に終わった3つの問題を悔いた。 「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極み。ロシアとの平和条約、憲法改正、志半ばで職を去ることは断腸の思いだ」 第2次政権が発足してから7年8か月、北朝鮮による拉致問題も、北方領土問題を含むロシアとの平和条約締結交渉も結局進展はなく、悲願としていた憲法改正の実現も国会による改憲発議すら程遠いままだった。 拉致問題については、アメリカのトランプ大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長、中国の習近平主席らが言及したことに触れ、「かつては日本しか主張してなかったが、国際的に認識されるようになった」と成果を挙げつつ、「でも結果が出ていない」。「ありとあらゆる可能性、さまざまなアプローチで全力を尽くしてきた」と釈明した。 憲法改正に関しては、自民党内で「自衛隊の9条明記」「参院選挙区の合区解消」「緊急事態条項」「教育無償化の明記」の4項目に絞り込んで改憲案のたたき台イメージをまとめた。しかし「残念ながら、まだ国民的な世論が十分に盛り上がらなかったのは事実。それなしには進められないとあらためて痛感している」。国会議員が国会で議論しなければ「国民的な議論は広がらない」と述べ、今後は1議員として取り組んでいきたいとした。 新型コロナウイルスへの政府対応については「まさに知見がない中で、その時々の知見を活かしながら最善を尽くしてきたつもり」と説明。死者・重症者の数や経済への影響は他の先進国に比べれば「抑えられている」としたものの、布マスクの配布や10万円の特別給付金、持続化給付金の支給をめぐっては混乱も生まれた。「不十分な点もあるし、反省すべき点も多々あると申し上げなくてはならない」と語った。