「教育勅語」から「雪深い秋田」へ 安倍政権から菅政権への文化転換
安倍晋三首相の後任を選ぶ自民党総裁選挙が14日に投開票されます。菅義偉官房長官、岸田文雄政務調査会長、石破茂元幹事長の3人が立候補していますが、すでに「菅氏の勝利は確実」との見方が大勢を占めているようです。 建築家で、文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋氏は、この菅氏について「意外な人気を博するかもしれない」と話します。若山氏が独自の「文化論」的な視点から論じます。
辞意で評価が上がる
「一強」といわれた、7年8ヶ月に及ぶ安倍政権が終わる。 マスコミの総括は、これまでと同様に二分されている。「産経的評価」と「朝日的批判」という表現でもほぼ理解できるが、その二分性こそ、この政権の特徴であった。どちらに肩入れするかは本論の目的ではない。なぜこの政権が一強であったのか、それがなぜつまずいたのか、そしてそれに代わるであろう菅政権の特質は何か、文化論的に考えてみたい。 安倍政権の実績を簡単におさらいしよう。まずアベノミクスという経済政策であるが、株価が上がり失業率が下がったことは評価されており、財政赤字と給料水準については批判がある。次に安保法制であるが、何かと周辺が脅かされる現在、日米の協力体制が明確化したことは評価されており、憲法違反(破壊という人もいる)であって戦争につながるという批判もある。 外交については多くの人が評価している。トランプ大統領のみならず、多くの首脳たちの評価が高いのは、1年や2年で交代するこれまでの総理ではありえなかったことだ。つまり安倍政権の実績には賛否両論あるが、相当のことを成し遂げたといえるだろう。そして前にこの欄で「辞めるなら早い方が後世に評価が残る」と書いたが、健康問題によって職務をまっとうできないと判断したらすみやかに次の政権に委ねることは、新型コロナウイルスの危機下にあって的を射た判断だと思われる。 辞意を表明して、にわかに支持率が高まったのは、そこを買ってのことでもあり、長期政権はいいが長すぎるのはよくないということでもあるのだろう。「前と同様に投げ出した」という批判は当たらない。代わって菅政権が誕生しそうな気配であるが、だいぶ前に安倍政権を「安倍―菅政権」と書き、少し前に「菅政権のコロナ対策」と書いてきたので、さほど驚かない。安倍政権を継承するのではなく、すでに内政のかなりの部分が菅政権といってもよかったのである。