安倍政権が残したものとは? アベノミクスの光と影
アベノミクスの「前半」と「後半」
話題に上る「アベノミクス」だが、これは安倍前首相が自ら命名した経済政策の総称だ。1980年代に一世を風靡(ふうび)したアメリカ・レーガン大統領のレーガノミクスにあやかってつけたもの。日本で2012年12月、民主党から政権を奪還した安倍政権は3本の矢(1)大胆な金融政策(2)機動的な財政政策(3)投資を呼ぶ成長戦略――を柱にデフレからの脱却を目指した。 アベノミクスは、いまでもこの「3本の矢」のイメージが強く、その評価ばかりが語られるが、実はアベノミクスは前半(2012年12月~)と後半(2015年9月~)に分けて分析することができる。前半は確かにデフレからの脱却に成功し、比較的富裕層や大手企業、就職問題を抱える若者世代には好評だ。 反面、成長戦略は掛け声ばかりと地方都市や中小企業には不評だ。実際、成長の果実が全国に行き渡り、賃金が上がるとされた「トリクルダウン」にはつながっていない。国民の実質賃金は年々下がっている。
後半の「新3本の矢」は(1)GDP500兆円を600兆円へ、(2)出生率1.4を1.8に(3)介護離職者10万人をゼロに――だ。残念ながら、この後半のアベノミクスは評価に値する成果はない。 というのも、GDP500兆円はこの20年間殆ど変化しておらず、むしろコロナ禍で現在485兆円を割り込み、縮小の方向にある。出生率も1.35に低下し、年々史上最低の出生数を更新中だ。人口は毎年50万人以上減少している。鳥取県が毎年消える規模だ。介護離職者も2019年で9万9千人おり、ゼロはおろか今後増えるという予測すらある。 にもかかわらず、不思議なことにこのいま行われているアベノミクス(新3本の矢)を論評する記事はほとんどない。菅義偉(よしひで)首相は「アベノミクス継承」を謳っているが、それは旧3本の矢を指しているのか、新3本の矢を指しているのか、ハッキリすべきだ。