沖縄版カスタネット「三板」 見た目は? 演奏法は? ルーツは?
「三板」―― この漢字の読み方が分かる人はどのぐらいいるだろうか。正解は「さんば」。三枚の板から成る、カスタネットのような沖縄の打楽器だ。去る3月8日は語呂合わせで「三板の日」。三板の普及に取り組む「沖縄三板協会」は例年であれば、この日にイベントを開催し、多くの聴衆と盛り上がるところだが、今年はコロナ禍のため中止。インターネット上で、13人の演者が三板を演奏する動画を公開し、この日を祝った。すっかり全国的に知られるようになった三線(さんしん)以外、知られる機会の少ない沖縄の楽器。今回は三板の奏法や成り立ちを紹介する。(取材・文:長濱良起)
三板は縦10センチ、横5センチほどの3枚の木の板からなる。一方の端に穴があけられ、その中を通した紐でつながっている。その紐がある端を左手 の指にかけ、カスタネットのように握るようにして音を出すのが基本動作だ。百聞は一見に如かず。下記、関連記事の「【動画】『三板の日』に合わせ、沖縄三板協会が公開した動画」(31分20秒ごろ )をご覧いただきたい。 音の出し方としては(1)三板を掛けた左手を握る(2)右手で三板の下部を握る(3)右手で三板の面を叩く――に加え、右手の各指で順番よく弾いて連続音を出す「トレモロ奏法」がある。この奏法は、聴こえた音のまま「ケレレレケッケン」とも呼ばれている(動画33分20秒ごろ )。
片手でも音が鳴らせるため、祝いの場などで大勢が参加し、両手を障子の開け閉めをするように動かす沖縄の手踊り・カチャーシーとも親和性が高い。「オパチパチパチ」と響かせながら踊ると、沖縄県民からも一目置かれるほど盛り上がること請け合いだ。
ルーツは中国 「沖縄のジミヘン」も歴史に名
沖縄音楽 の特徴の一つは「琉球音階」。「ドレミファソラシド」からなる長音階から、レとラを抜いたものがそれだ。与論島や沖永良部島といった、鹿児島県奄美群島の一部の音楽でも用いられている。リズムは “跳ねた” ノリ のものが多い。そして、1990年代ごろ以降のBEGINやTHE BOOMなどの活躍もあり、弦楽器の三線は全国的にも知られるようになった。一方で、他の琉球・沖縄の楽器の知名度はまだまだ低い。 沖縄三板協会は2001年に前身となる「日本三板協会」として設立された。終身名誉顧問には、三線 の早弾きで知られ、「沖縄のジミヘン」とも称される沖縄民謡界の重鎮、登川誠仁氏(のぼりかわ・せいじん。1932~2013年)が名を遺す。 三板は1950年代までは竹で作られていたというが、登川氏が三線製作で余った固い材で三板を作ることを提唱するようになってから、黒木やチャーギ(イヌマキ)でも三板が作られるようになり、音色も多様になった。 そのルーツは中国楽器の「拍板(はくばん、パイバン)」、さらには同じく中国の「三板(サンバン)」だと言われている。拍板は2枚の板から成り、三板に比べると板が長い。沖縄三板協会の資料によると、琉球王国(1429~1879年)時代、室内楽である御座楽(うざがく)では、板の長い拍板を使っていたが、街中を練り歩いて演奏する路次楽(るじがく)では、板の短い中国の三板が用いられていた。その“中国の三板(サンバン)”を目にした沖縄の農民たちが、見様見真似で自らの民謡に取り入れて作り出したのが、“沖縄の三板(サンバ)”だった。