マルセイユと長友佑都…13年前にあった不思議な縁
それでも迷うことなく、ヨーロッパの5大リーグのひとつとなるフランスを選んだ。脳裏にはFC東京でプロになる道か、あるいは明治大学サッカー部に残る道かで悩んでいた時期に中学時代の恩師、井上博教諭から授かった金言「道は2つある。厳しい方を選べ」が今回も浮かび、そして従った。 「サッカー選手なのでまずはピッチの上で、しっかりとパフォーマンスでチームに貢献したい。いろいろと経験をさせてもらってきたので、それをピッチのなかだけではなくて、ピッチの外でもしっかりと生かしてチームをまとめられるように。そういうコミュニケーションはどんどん取っていきたい」 リーグアンでは10シーズンも遠ざかっている優勝を目指し、同時に長友自身が「ワールドカップよりもレベルが上」と位置づける最高峰の戦い、チャンピオンズリーグへ今シーズンも挑める。厳しい道を選んだからこそ待つ熾烈な戦いが、12日で34歳になる鉄人の闘志を高ぶらせる。 しかも今回はロシアワールドカップを含めた日本代表の戦いで、左右のサイドバックとして何度も共演してきた酒井と、そろってチャンピオンズリーグの舞台に立てる可能性がある。 「(酒井)宏樹は戦友であり、友人でもある。性格がめちゃくちゃよくて、本当に優しくて、ただピッチに入ると球際で戦って絶対に負けない。そのギャップがすごいなといつも思っています」 チャンピオンズリーグの歴史を振り返れば、昨シーズンのグループステージで、レッドブル・ザルツブルク(オーストリア)の南野拓実(現リヴァプール)と奥川雅也が4度同じピッチに立っている。しかし、ラウンド16以降になると、同じクラブで日本人選手が共演した光景はまだ生まれていない。 「チャンピオンズリーグではグループステージを突破して、なるべく上へ勝ち進みたいですね」 目を輝かせた長友は、実質的な戦力外となったガラタサライ(トルコ)で2月から登録を外れ、公式戦に出られないまま6月末の契約満了を迎えた。しかし、試合勘が失われた懸念を高まるばかりのモチベーションと、日々課してきたハードな自主トレの成果で補いながら、プロとして通算5つ目のクラブで「25番」を背負ったベテランは、エンジンを全開にして新たな一歩を踏み出した。 (文責・藤江直人/スポーツライター)