日銀・黒田総裁会見9月22日(全文2)2%の物価安定目標は達成できる
長期金利操作の効果は
読売新聞:すいません、読売新聞の【セキネ 00:38:51】でございます。1件、お伺いしたいんですが、米欧の中央銀行のほうが資産借入の縮小を表明しているわけですけれども、一方で日銀についてはYCC、長期金利を操作するという異例の形で金融政策を行っているわけですが、これが今月でちょうど5年になるわけですが、総裁が振り返られてその効果、ほかの中銀がやっていないことをやっているわけですけれども、その辺りの評価をお伺いしたいと思います。 黒田:この点は、一方で、金融政策の効果が出てくるチャネルとしてはどこの中央銀行も全て、基本的には名目金利が下がり、そして実質金利が下がって、経済の拡大を促し、GCPギャップが減っていって、さらにプラスに転換して物価が上がっていくということ。それからアメリカの場合は比較的、予想物価上昇率が2%にアンカーされてますけれども、ほかの国ではあまりアンカーされていないわけですが、物価上昇期待、予想っていうものも上がっていって、その両者で上がっていくということで、チャネルとしては基本的には金融政策の場合は、金利っていうものが多いわけですね。
イールドカーブ・コントロールは効果を発揮
もちろん量による効果っていうものもありうるわけですし、特に期待に働き掛けるっていう意味で、資産買い入れ額のような量をターゲットにしたり、それを示すっていうことも一定の効果はあるんですけれども、特にイールドカーブ・コントロールによる金利を目標にしてやるっていうことが、なんていうんでしょう、金融政策のチャンネルを無視したっていう議論ではなくて、そういう中で日本の場合にこういういわば長短金利操作付き量的・質的金融緩和っていう形で、イールドカーブ・コントロールすることが一方で、超長期金利を下げすぎて、消費にマイナスの影響は出ない。他方で、この適切なイールドカーブによって経済を刺激するということを狙って始めたわけですし、先ほどもちょっとお答えの中で申し上げたように、今年の初めにお示しした点検でも、このイールドカーブ・コントロールというのが、かなり効果を発揮していたということは示されていると思います。 あるいは、世界の中央銀行の中で金利をターゲットにしてるところもあるんですけれども、さすがに10年の長期金利をターゲットにしてるというより、もうちょっと中期的な金利をターゲットにしていると。金利をターゲットにするところは比較的少なくて、むしろ今のところは量をターゲットにしている中央銀行が多いわけですね。 その中にはかつての、いわば長期金利っていうのは短期金利の期待で決まってくると。だから短期金利を操作していれば、長期金利にも影響を与えられるので、短期金利操作でいいという考えが比較的長く続いてきたわけですけども、ご承知のとおり短期金利がほとんどゼロになる、あるいは欧州とか日本の場合も政策金利がマイナスになっていますから。 そういうところではむしろ、長期資産を直接買い入れて長期金利を下げるということに政策の比重が移ってきているわけですね。その場合も、長期金利自体を目標にするか、長期債券、国債の借入額をターゲットにするかということは違いがあると思いますけれども、いずれにしろ、かつてのような、短期金利、政策金利を操作することによって長期金利も動いて、で、長期金利が設備投資とか、その他に影響が出て効果が出てくるっていう考え方は現実問題として、いわゆる短期金利がゼロとかマイナスになる世界ではあまり有効でなくなっているということかなと。