日銀・黒田総裁会見9月22日(全文1)感染症リスクの低下につれて消費も回復
日銀の黒田東彦総裁は金融政策決定会合後の22日午後、記者会見を行った。 ※【**** 00:35:30】などと記した部分は、判別できなかった箇所ですので、ご了承ください。タイムレコードは、「日銀・黒田総裁が定例会見 景気「基調としては持ち直している」(2021年9月22日)」に対応しております。 【動画】日銀・黒田総裁が定例会見 景気「基調としては持ち直している」(2021年9月22日) ◇ ◇
現状維持を賛成多数で決定
朝日新聞:9月の幹事社の朝日新聞の津阪と申します。よろしくお願いいたします。まず総裁から、今回の政策決定会合の決定内容について、ご説明をお願いいたします。 黒田:本日の決定会合では、長短金利操作、いわゆるイールドカーブ・コントロールの下での金融市場調節方針について、現状維持とすることを賛成多数で決定しました。長期国債以外の資産の買い入れ方針に関しても現状維持とすることを全員一致で決定しました。 また、本日の決定会合では7月の会合で骨子素案を公表した、気候変動対応を支援するための資金供給オペレーションについて、対象先となる金融機関の範囲や、バックファイナンスの対象となる投融資の範囲などの詳細を決定しました。今後、貸し付け対象先の公募を開始し、初回のオペは12月下旬にオファーする予定です。 次に、経済・物価動向について説明いたします。わが国の景気の現状については、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直していると判断しました。やや詳しく申し上げますと、海外経済は国、地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じて見れば回復しています。そうした下で、輸出や鉱工業生産は一部に供給制約の影響を受けつつも増加を続けています。また、企業収益や業況感は全体として改善を続けています。設備投資は一部業種に弱さが見られるものの、持ち直しています。
個人消費は下押し圧力が依然強い
雇用・所得環境を見ると、感染症の影響から弱い動きが続いています。個人消費は飲食、宿泊等のサービス消費における下押し圧力が依然として強く、引き続き足踏み状態となっています。住宅投資は持ち直しています。金融環境については企業の資金繰りに厳しさが見られるものの、全体として緩和した状態にあります。 先行きのわが国経済を展望すると、当面の経済活動の水準は対面型サービス部門を中心に感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、ワクチン接種の進捗などに伴い、感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて回復していくとみられます。その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まる下で、わが国経済はさらに成長を続けると予想されます。 物価面では生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響が見られる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっています。また、予想物価上昇率は横ばい圏内で推移しています。先行きについては生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、エネルギー価格などの上昇を反映して小幅のプラスに転じていくと予想されます。その後、経済の改善が続く下で、携帯電話通信料引き下げの影響剥落もあって、徐々に上昇率を高めていくと考えられます。 リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響といった点について不確実性が大きいと考えています。さらに、感染症の影響が収束するまでの間、企業や家計の中長期的な成長機会が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持される下で、金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要です。