新型コロナ対応の現場に“和み”を 医療従事者に似顔絵贈るイラストレーター
「いつか自分も……」 不安を抱える医師
2020年5月、村岡さんに別の病院から似顔絵セラピーの依頼が来た。その病院には、“ある不安”を抱える医師がいた。東京都立多摩総合医療センターに勤める岩浪悟医師だ。 「いつ自分がかかっちゃうのか、という不安がある。それを家族にうつしてしまったら。その家族が(知らないうちにウイルスを)どこかに持って行ってしまったら。それを考えると、家族と離れた方が良いのか……」 新型コロナと闘いながらも自らの感染、身内への二次感染に悩む胸の内があった。 葛藤の末、岩浪医師は、家族と離れて暮らすことを決心。いまは、スマホに入っている、妻と2人の子どもと一緒に写った家族写真を支えに、感染者の対応に注力しているという。 そんな岩浪医師とパソコン画面越しに向き合った村岡さんが、いつものように聞く。 「家族と会ったら何をしたいですか?」 「うちの子がサッカーを好きなので、外でボールを蹴りたいですね」。岩浪医師の返答を受け、村岡さんのイメージが一気に固まった。
1週間後、村岡さんが描いた絵が岩浪医師のもとへ届けられた。 その似顔絵には、笑顔で家族と一緒に過ごしている岩浪医師の姿が収まっていた。そして、岩浪医師の足元には、子どもが大好きなサッカーボールが――。 似顔絵を見た岩浪医師は「嬉しいですね。こんな感じで幸せに過ごせたら……」 その顔には絵と同様の笑顔が浮かんでいた。