「孤独」感じる人を減らしたい 高校生が行動に至るまで
「孤独」を感じる人を減らしたい。社会から「孤独」をなくしたい―― 神奈川県内の私立高校に通う高校三年の女子生徒(17)は語ります。なぜ彼女はそう思うに至ったのでしょう? 何に問題意識を持っているのでしょうか? 寄稿いただきました。
スターのような自慢の姉
初めまして。神奈川県の私立高校に通う高校三年生です。私は「孤独を感じる人を一人でも多く減らしたい」ということをテーマに掲げ、これを日常生活の中で溶け込んでいる場(駅の待合室や美容室、公園など)を使って達成できないかと、チームで活動をしています。私は少し変わった経緯を持ってこの活動を始めました。今回は、なぜ私がこのような事を考え、行動をしているか、そのきっかけについてお話ししようと思います。 私には大好きな自慢の姉(24)がいます。姉は高校1年生のころ、留学先のカナダの学校で映像の世界に出合いました。それをきっかけに仕事でテレビドラマのVFX制作(CGを使って実映像に視覚効果を施す)や人気ファッション誌の公式サイトで流される映像の制作に携わりました。アーティスティックなビジュアルの世界観やお洒落なファッションセンスなど優れた感性を持っている姉は、私にとってスターのような存在です。 そんな姉は生まれつきシャルコー・マリー・トゥース病(CMT)という手足の筋力低下や感覚低下を伴う疾患を抱えていることもあり、自分のことで精一杯になりがちです。そのため、周りを見て行動することが苦手です。姉の周りにはたくさんの障害があります。ここで使う「障害」という言葉ですが、私は「周りの環境が生み出した、ある特定の人への壁」だと定義付けています。
孤独は“周囲”が生む
姉は、私と過ごしている時は障害を感じないけれど一歩外に出ると多くの障害があると言います。 「小学校では一人で過ごすことが多かったな。運動会や遠足ではみんなは不器用な私と同じグループになるのが嫌だったから班決めのときは結構辛かったよ。最後まで一人残っちゃってね、中学ではお昼は大抵一人で食べていたよ」 姉はとつとつと話してくれます。 自分のことで精一杯な姉は、進学やクラス替えなどの環境の変化やスピードに対応する余裕がありませんでした。歩くのが遅く、手が不自由な姉は一斉行動や制作活動など求められる状況に皆と同じようについていくことができませんでした。不器用な姉に対して周りの目は冷たく、先生からのいじめさえもあったと言います。私はこれを「周りの環境が生み出した、ある特定の人への壁」だと思うのです。姉はいつか自分を受け入れてくれる人がいるという希望を持ちつつも、やがて高校、大学へも登校できなくなる日が増えました。 家では明るくて悩みがあるように見えなかったので、まだ幼かった私は姉の気持ちに気付くことはできませんでした。やがて姉は好きな映像の世界で働くことになりましたが、手先が器用に使えず、スピード感においてなかなか周りと同等の結果が出せませんでした。そのことにより職場の上司から強い言葉で激しく非難され、2年ほどで辞職することになりました。 これらのことから自分は社会から弾き出されたのだと感じた姉は、 「新しい人に出会うことが怖い。誰も自分を受け入れてくれないから」 と言って引きこもるようになりました。