なぜ吉田麻也は批判覚悟で東京五輪有観客開催を訴えたのか…「誰のための何のための戦いなんだろう。そこはクエスチョン」
現時点で東京五輪全体の750セッションのうち、無観客開催は724セッションを数える。有観客はわずか3.5%の26セッションとなっている状況に、吉田はサッカー選手だけでなく、アスリート全員の思いを代弁するように思いを発信し続けた。 「選手はもちろんファンの前でプレーしたいという気持ちがあります。自分が小さなときに観たオリンピックから影響を受けましたけど、時差がなくオンタイムで試合を観られれば、2002年の(日韓共催)ワールドカップがそうだったように、子どもたちはものすごい感動と衝撃を受けると思うし、(僕たちも)いろいろなものを与えられる。そのためにオリンピックを招致したのではなかったのか、と個人的には思っています」 東京都および日本国内における新型コロナウイルスの感染状況を、もちろん吉田自身も理解している。3月と6月に国内で行われた日本代表の活動時には、必ず医療従事者へ感謝の思いを捧げてきたし、スペイン戦後のオンライン会見でもこう語っている。 「(いろいろな方々が)毎日、命をかけて戦っているのは重々理解していますし、オリンピックがやれるということだけでも感謝しなければいけない立場にあることは理解しています」 それでも、首都圏での無観客開催が決まったのを境に、東京五輪本番へ向けた事前キャンプを行っていたU-24代表の選手たちが連日対応するオンライン取材でも、無観客開催に対する個人的な思いを言い出しにくい雰囲気が伝わってきた。 吉田が言及した「どっちのコメントをしても叩かれるような状況」が、背景にあったと察することができる。そのなかで吉田は3-1で勝利した12日のU-24ホンジュラス代表戦後に「非常に」を5度も連呼した後に、こんな言葉を残している。 「残念です。選手だけでなく、オリンピックに関わるすべての人にとって非常に残念な決定かなと。やはりスポーツは観客あってこそだとあらためて思っています。(ユーロ2020の)ウェンブリーや(テニスの)ウィンブルドンを見ていると、本当にうらやましいと感じますね」 そうした思いがさらに高じたのか。東京五輪前で最後の強化試合を終えた節目で、オーバーエイジ枠で招集されたチーム最年長の32歳として、24歳以下の若い後輩たちを含めて、すべての競技者が共有する思い、つまり有観客開催をしっかりと訴えた。 「サッカーに限らず、正直、人生をかけて戦っている選手たちばかりだし、マイナー競技で言うとオリンピックにかけている選手たちはもっと大勢いる。なので、何とかもう一度(有観客開催を)考えてほしい。真剣に検討してほしいと思っています」