城氏が最終チェック…“最強”スペインとの意義あるドローから見えた東京五輪でのメダル可能性
東京五輪の金メダル候補スペインを迎えての本番前ラストマッチは、意義のある引き分けになった。EUROで4強に進出したA代表が6人も加わっているスペインは、U-24代表が、ここまで戦ってきたチームに比べると1枚どころか3枚も4枚も格上の最強の相手。これまでは、日本が主導権を握って戦うことができたが、今回は、まったく逆の展開で前半のボール保有率は、33対67だった。これまでとサッカーの質のレベルが大きく違うチームを相手に、粘り強く守りながら先制点を奪い引き分けたのは大きな収穫である。 もしホンジュラス戦を最後に「いい気分」で五輪本番に突入していれば、メキシコやフランスを相手に主導権を握れない展開になったときに戸惑い、あたふたしたままゲームを落として五輪の戦いは終わってしまっていただろう。 たかが1試合だが、されど1試合。このスペイン戦の経験がチームを五輪直前に大きく成長させたと思う。 おそらく試合前は「いつものように前からいけ!」の指示が出ていたのだろう。キックオフ直後は、積極的にプレスにいったが、個の技術で簡単に外され、実力差を思い知らされると、ものの2、3分ほどで戦術を変えた。守備陣は無用に前に出ずにブロックを作って粘り強く守り、相手のミス、あるいは、ボールを奪ってからのワンチャンスを待った。強豪国用のゲーム戦術である。 その中心を担ったのは、吉田ー冨安の鉄壁コンビ。彼らがディフェンスラインを絶妙にコントロールしていた。「押し上げる」「下げる」の細心の仕事をコツコツとして、スペインに狙われていた遠藤ー板倉のダブルボランチの裏のスペースをうまくカバーしていた。 日本はスペインに縦のキラーパスをズバズバと通された。スペインは、ボール1個分の隙間があればパスを通してくる。少しでも気を抜いた瞬間に「まさか、ここにはパスは入れないだろう」という隙間を抜いてくるので戸惑いはあった。世界でも稀有なチームカラーではあるが、ワンタッチで、とてつもなくスピードの速いパスを何度も通され、危ない局面を作られた。世界のトップチームが、そういう所を狙ってくることを実際に肌感覚で知ったのは何ものにも代えがたい経験。最後まで対応に苦しんだが、本番で同じような状況に遭遇した場合には、もう少し対応できるようになるとは思う。 得点シーンは前半42分。久保がレアルソシエダでプレーしているスビメンディを引っ張りながら、右手のハンドオフでなぎ倒して左サイドを突破してフリーになると、冷静に中を見ながら、中央へ走り込んできた堂安に素晴らしいパスを左足で送り、堂安がそれを左足で正確に決めた。久保のパスは、少し戻るような丁寧で優しいパスだった。タイミングやパススピードが少しでも早ければ、走り込んできた堂安も対応できず、シュートはふかしたり、ゴロになっていただろう。これは久保も堂安も、同じ左利き同士だからこそわかる感覚から生まれたもの。久保ー堂安ゆえの阿吽の呼吸だ。 久保ー堂安のコンビネーションで相手ディフェンスを崩したわけではないが、最後の大事な局面をこのコンビで打開できるという可能性は見せた。久保にボールが集まったときに何かが起きるという期待感があり、堂安のシュートには4戦連続ゴールを決めた正確性がある。このホットラインは間違いなくチームの武器になる。