賛否の声がある中で“強行”広島平和訪問のバッハ会長に海外メディアも注目「力ずくの五輪正当化に非難の声」
国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が今日16日に広島市の平和記念公園を訪れ、被爆地から世界に「スポーツを通じての平和な社会の実現」のメッセージを発信する。バッハ氏は、東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長と共に訪問し、湯崎知事と広島市の小池副市長が出迎える中、慰霊碑に献花。続いて平和記念資料館を見学、被爆者と対面した後にスピーチを行う予定だが、「緊急事態宣言」が発令された東京から関係者が移動してくることや、新型コロナ禍での五輪開催を正当化するために「核のない平和な世界」のイメージを利用することに対して「被爆者に対する冒とく」などという批判の声も多く出ており、海外メディアは、その抗議の声に注目して、歓迎されざる被爆地訪問であることを伝えた。
英ガーディアン紙「広島の被爆者を侮辱しているとの非難」
英ガーディアン紙の電子版は「IOC会長は被爆地を訪問することで広島の被爆者を侮辱していると非難された」とし、「被爆者の団体は、バッハ氏は(広島に)近づくべきではないと言っており、パンデミックにもかかわらず『力ずくでオリンピック開催を正当化するために被爆地を利用した』と非難した」と報じた。 「広島の住民は、バッハ氏の広島訪問は、原爆の犠牲者を汚すものだとして、訪問中止を求めている」と説明し、広島県の市民団体(東京五輪の中止を求める広島連絡会)が、広島県知事と広島市長に対し、バッハ氏の訪問に反対する声明を提出したことも合わせて伝えた。 そして、この市民団体の代表を務める弁護士の足立修一氏の提出した「バッハ会長が『核兵器のない平和な世界』というイメージを用いて、パンデミック下での強制的なオリンピック開催を正当化することは、被爆者への冒涜である」、「このような行為は、世界的な核兵器廃絶運動に悪影響を与える以外の何物でもありません」という声明の内容も詳しく紹介した。 さらに「電子署名の呼びかけには、7月16日は国連の定めたオリンピック休戦の開始日であるが、同時に広島と長崎への原爆投下につながったニューメキシコ州でのトリニティ核実験が行われた日であるとも書かれている」と続け、バッハ会長の訪問の中止を訴える、この電子署名がすでに7万5000近くも集まっていることを伝えた。 国際大会をカバーするオンラインメディア「インサイド・ザ・ゲームズ」も、バッハ会長の広島訪問に対して抗議運動が起きていることを取り上げた。 「IOCのバッハ会長は、明日、広島に到着するが、両手を広げて歓迎されることはなさそうだ」と書き出し「この地域の市民団体は今週、バッハ会長の東京から800キロメートル以上離れた広島への訪問を中止することを求め、バッハ会長が1945年に米国によって広島に投下された戦時中の原爆の生存者に対して『不名誉』を与えていると非難した」と報じた。