なぜ吉田麻也は批判覚悟で東京五輪有観客開催を訴えたのか…「誰のための何のための戦いなんだろう。そこはクエスチョン」
きっかけはテレビの生中継だった。ノエビアスタジアム神戸で17日に行われたU-24スペイン代表との国際親善試合。東京五輪前で最後となる強化試合を、大会の優勝候補を相手に1-1で引き分けた直後のフラッシュインタビューの途中だった。 ――本番では無観客ですが、日本のみなさんへ向けてどんな姿を見せたいですか。 男子サッカーのU-24日本代表が臨むグループリーグの全3試合をはじめ、ほとんどの競技が無観客での開催に決まった心境を問われたキャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)が「無観客は……残念ですね」と慎重な口調で言葉を紡ぎはじめた。 「なかなかアスリートが、そこに関してコメントを発するのが難しい状況にあるので。いまはどっちにコメントしても難しい状況になるので……」 このあたりで「いよいよ5日後、ニッポンのオリンピックが始まります!」の声が突然かぶせられ、生中継はコマーシャルに移った。放送枠の関係なのか。あるいは別の意図が働いていたのかはわからない。ただ、テレビ越しに伝えようとした思いを知りたかったメディアから、試合後のオンライン会見の最後に質問が飛んだ。 ――途中で切られてしまった、フラッシュインタビューの続きを聞かせてください。 意を決したかのように、吉田は「これは多分、後で怒られますけど……」と断りを入れた上で、胸中に秘めてきた思いを隠さずに言葉に変換していった。 「実際、いまそういう状況じゃないですか。でも、どっちのコメントをしても叩かれるような状況は個人的に間違っていると思うし、この大会を割り切ってやるに当たって国民の税金がたくさん使われていると思うんですよ。なのに、国民が観に行けないのならば、いったい誰のためのオリンピックなのかという気持ちがあります」 都内会場の無観客開催が決まったのは8日。東京都への4度目の緊急事態宣言発出が決まった状況を受けて、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長、東京都の小池百合子知事、丸川珠代五輪相、国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長による5者協議で確認された。 ほどなくして東京都に隣接する埼玉、千葉、神奈川の3県でも無観客開催が決定。調整中としていた北海道と福島県も首都圏に続き、現状では宮城、茨城、静岡の3県が有観客開催となっているが、このうち茨城県は学校連携観戦に限定されている。