縄文人はどこから来た? 遺伝をめぐる“誤解” 古代ゲノム研究から見えてきたこと #令和の人権
太田さんは、「ゲノムを社会から遠い存在にしたくない」と話す。 「ヒトの遺伝情報は99.9%までが共通です。残りのわずか0.1%の差異が、環境要因や突然変異と相まって、性別や皮膚の色や病気の有無などとして現れる。僕は、遺伝を科学的に理解することによって、『人種』や『民族』の概念や、病気の捉え方が変わり、そのような認識の変化が差別や偏見を減らしていくのではないかと期待しています。ヒトゲノム解読計画の完了から二十余年。学問にゲノムを導入する試みはまだ始まったばかりです」
太田博樹(おおた・ひろき) 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻教授。1968年生まれ。東京大学大学院理学系研究科修了、博士(理学)。マックス・プランク進化人類学研究所、イエール大学の研究員、東京大学大学院新領域創成科学研究科助教、北里大学医学部解剖学准教授を経て、2019年から現職。専門はゲノム人類学。著書に『遺伝人類学入門』『古代ゲノムから見たサピエンス史』、共著に『ゲノムでたどる古代の日本列島』など。
--------- 藤井誠二(ふじい・せいじ) ノンフィクションライター。1965年、愛知県生まれ。著書に『「少年A」被害者遺族の慟哭』『殺された側の論理』『黙秘の壁』『沖縄アンダーグラウンド』『路上の熱量』など多数。近著に『贖罪 殺人は償えるのか』。