死んだ後の住処も選べる時代になった。人生の終わり方について話そう。
犬、猫、羊、メダカ……。ペットと弔われたい人も。
小谷 布川さんのところの墓地は、樹木葬ですよね? 布川 はい。土に還れるように感じて。うちの樹木葬で初めて納骨したときのことは今もよく覚えています。風がそよいで、小鳥がさえずって。あのときほっとしたのかもしれません。生前に面識のない方の納骨でも、涙があふれてきました。うちは墓地というよりも公園のような雰囲気です。お墓参りのときは、ベンチでピクニックのように飲食していますよ。 小谷 知り合いで、夫に先立たれた女性は霊園でコーヒー豆を挽いて飲んでいます。夫の好物だったから、と。 布川 うちはくつろげるようにチェアも置きました。私自身のときも樹木葬がいいな、と思っています。 小谷 私は自分自身が死んだ後の骨やお墓は、あとの人たちの好きにしていただいていいかな。お墓は残された人のためにあると思うので。誰と一緒に安置されてもいいし、遺骨を処分してくれてもいいです。お葬式にも、こだわりはないです。
布川 なんて潔い。 小谷 死後の世界を信じていないんです、なんの宗教も信じていません。だから、遺骨は捨ててもらってかまいません。ただ矛盾することを言いますが、遺骨が乱暴な扱いを受けない誠実な生き方を心がけてはいます。親や子のような縦の血縁関係だけでなく、横のつながりを大切にして暮らさなくてはいけないとも思っています。布川さんの共同墓も横のつながりですよね。 布川 はい。実際に、家族よりも友人が大切だと考える方は多いです。また、家族よりもペットと同じお墓に入りたい人も珍しくありません。 小谷 自分にとって大切な存在は人間とは限りませんから。犬や猫や馬かもしれません。先日、じいちゃんやばあちゃんは家族じゃないけれどメダカは家族、と言う学生がいて、私ひっくり返りそうになりました。その学生の祖父母が聞いたらショックでしょうね。
布川 馬のたてがみと一緒に埋葬されたいと、持ってこられた方はいました。 小谷 そういう面で樹木葬は許容範囲が広いですね。私は自分の骨は捨てられてもかまわないけれど、みなさんには「自分の最期を考えておきましょう」と提案しています。それには、正しい情報を得て、知っておいてもらいたい。 布川 お墓については、事実とは違う思い込みが多いですね。 小谷 入るお墓がないことを心配している人がたくさんいらっしゃる。でも公営墓地でも、6親等まで同じお墓に入れます。結婚して名字が変わったら実家のお墓に入れないとか、次男からは同じお墓に入れないと言う墓石屋さんもいますが、それは売るための口上。いとこ関係が4親等なので、かなり離れている親戚も一緒に入れます。 布川 民間の霊園なら、籍の入っていない男女からペットまで一緒に入れる例はあるので、思い込みで判断はせず、きちんと確認することは大切ですね。