死んだ後の住処も選べる時代になった。人生の終わり方について話そう。
コロナ禍を経たことで墓参りが減る傾向に。
小谷 脱・血縁のお墓、求められていますね。石に「○○家の墓」と彫ったスタイルが日本ではずっとスタンダードでした。でも、社会に合わなくなっています。女性だけの共同墓をはじめ、血縁を超えたお墓は増えています。大学で教えていると、今の学生たちの多くが祖父母を「家族」と思っていません。「親戚」と呼びます。核家族で、同じ屋根の下に暮らしたことがないからでしょう。 布川 お墓を建てること自体をやめようと考えている人も増えてきていますね。原因の一つに、私は東日本大震災の影響を感じています。地震や津波でお墓が壊されて流される映像を多くの人が見てしまいました。どんなに立派なお墓を建てても、それは永遠ではありません。だったら、最初からなくてもいいんじゃないかと考えるようになったのではないでしょうか。実際に、震災後は墓石を購入する人が減ったと、石材店からも聞きました。
小谷 コロナ禍の影響も大きいと感じています。緊急事態宣言下では、お墓参りができませんでしたよね。日本人がずっと行ってきたお彼岸やお盆の習慣が途切れました。それでも生活上困ることは特にないので、コロナが収束してきてもお墓参りの習慣が戻らなくなったのでは。実際、墓じまいする人が増えているそうです。 布川 私のところの共同墓では年に一度、供養祭を行っています。コロナ禍の前は300人ほど集まっていました。ところが、コロナで行動制限されて縮小せざるを得なくなった。その後、感染が落ち着いても、人数は減ったままです。今は100人くらいでしょうか。小谷さんのおっしゃるように、お参りしなくても実生活で困ることがないと気づいてしまったからでしょう。なんのためにお墓参りをするのか、みんなが考え始めたのかもしれません。 小谷 お墓参りについて、ひいてはお墓の在り方について考えるようになったのはいいこと。私はそう思っています。お墓は、そこに入る人とお参りする人、双方がいてこそ成立します。でも、血縁をはじめ人と人との結びつきが希薄になると、お墓の役割は遺骨置き場にすぎなくなる。お参りする人がいなくなるなら、そんなに立派な置き場は必要ないと考える人は増えるでしょうね。30年後には、お墓に納骨するという習慣もなくなっているかもしれません。