2024年ブロックチェーン活用事例──5分野から見える実用化元年
NFT
2024年12月、NFT市場の象徴的なプロジェクトの一つが終焉を迎えた。現代美術家・村上隆氏とのコラボレーションNFT「CloneX」で知られるアーティファクト(RTFKT)が、2025年1月をもっての事業終了を発表した。2021年にナイキに買収され、2022年のNFT市場最盛期には個体が1億円を超える取引を記録した同プロジェクトの終了は、NFT市場が新たな局面に移行したことを示している。 CloneXのような「PFP(Picture For Profile)」と呼ばれるプロフィール画像を中心としたNFTは勢いをなくしたが、ユーティリティを絡めた取り組みが増えている。 博報堂と日本航空は「KOKYO NFT」プロジェクトを実施。北海道洞爺湖町から鹿児島県奄美市まで、6つの地域における希少価値の高い火入れ前の生酒や、伝統工芸の職人とオリジナル包丁を作る権利をNFT化。地域の関係人口創出を目的とした取り組みを展開した。 ソニー銀行は、Web3エンターテインメント領域向けアプリ「Sony Bank CONNECT」を通じて、LiSAの全国アリーナツアーと連動したNFTキャンペーンを実施。アプリとSNFTプラットフォームの連携により、オンラインとオフラインを組み合わせたファンエンゲージメントを構築した。 中でもNFT活用においては、ゲーム分野での発展が目覚ましい。アバランチ基盤のバトルロイヤルゲーム「オフ・ザ・グリッド(Off The Grid)」はエピックゲームズストア(Epic Games Store)で1位を獲得。4日間でトランザクション420万件、ウォレット数約100万、Twitch上のゲームプレイ・ストリーミング時間100万時間を記録。Web3ゲームとしての実績を築いた。 メッセージアプリのテレグラム(Telegram)では、TONゲームが流行した。「タップ・トゥ・アーン」形式のゲームが盛り上がりを見せ、「Notcoin」は2024年1月のリリースから4月のマイニングフェーズ終了までに総プレイヤー数3500万人を記録した。 一方、国内のブロックチェーンゲーム(BCG)市場では課題も顕在化している。11月にはDMM CryptoがWeb3事業「Seamoon Protocol」の中止を発表。関連ゲームの段階的なサービス終了を決定した。この影響で、「コインムスメ」は別チェーンへの移行を余儀なくされ、「神櫓-KAMIYAGURA-」も年内に予定されていたリリース計画の見直しを迫られた。 こうした状況を背景に、年末、国内ゲーム業界で新たな動きが見られた。日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)は、コナミ、スクウェア・エニックス、セガなど主要ゲーム企業が参加する「ブロックチェーンゲーム部会」を設立。JCBAによると、ブロックチェーンゲームの開発には法律・税務・セキュリティなど多岐にわたる対応が必要となり、クリエイターがゲーム開発に専念できる環境が整っていないという。部会は、これらの課題への包括的な対応を目指す。 2024年のNFT市場は、投機的な取引からサービス活用へと転換した1年となった。大手企業による地域活性化やイベント連携など具体的な成果が示される一方、プロジェクト撤退も相次いだ。年末には国内主要ゲーム企業による業界団体が始動し、2025年は法制度や事業環境の整備を踏まえた新たな展開が見込まれる。 |文:栃山直樹|画像:Shutterstock
CoinDesk Japan 編集部