2024年ブロックチェーン活用事例──5分野から見える実用化元年
産業(物流・トレーサビリティ)
物流分野におけるブロックチェーン技術の活用は一時期ほど話題になっていないが、着実に進展している。Global Market Insightsの市場調査によると、サプライチェーンのトレーサビリティのためのブロックチェーン市場規模は2023年に2億ドル(約300億円)を記録し、2024年から2032年にかけて年平均31.9%以上の成長が見込まれている。特にトレーサビリティ分野では、複数の大手企業による新たな取り組みが相次ぎ、導入の裾野が広がりつつある。 キリンビールは「氷結mottainaiプロジェクト」において、IBMのブロックチェーン技術を活用したトレーサビリティプラットフォームを導入。果実の生産者から製造までの情報を可視化し、環境データも含めて統合的に管理。規格外果実の活用によるフードロス削減や、販売1本につき1円の農家還元を行っている 三菱ケミカルは、ブロックチェーン「Tapyrus」を活用したケミカルリサイクルの追跡システムの実証実験を実施。サプライチェーン上の複数企業間で、廃プラスチックの種類や品質情報を改ざん不可能な形で共有・管理することに成功したと発表した。 このプロジェクトは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムの一環として進められ、デジタルプロダクトパスポート(DPP)のニーズに応える成果として評価されている。 また、KlimaDAO JAPANは、カーボンクレジット取引プラットフォーム「KlimaDAO JAPAN MARKET」を始動させた。世界初の試みとして、日本の「J-クレジット」をポリゴンブロックチェーン上でトークン化。みずほグループとオプテージの支援のもと、11社と長崎県西海市が参加し、トークン化から無効化処理までの一連のプロセスを検証。カーボンクレジット市場の流動性と透明性向上を目指し、2025年春には個人も参加可能な一般公開を予定している。 SBIトレーサビリティは、高級日本酒「獺祭」向けに、ブロックチェーンとNFCタグを組み合わせたトレーサビリティサービス「SHIMENAWA」を展開。チタン製ボトルでも読み取り可能な特殊NFCタグを開発し、製品の真贋証明から流通管理までをワンストップで実現している。 これらの事例から見えてくるのは、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティが、単なる追跡管理から、環境・社会課題の解決へと大きく進化していることだ。そして、この動きは大企業だけでなく、生産者や消費者まで巻き込んだ包括的なエコシステムへと発展しつつある。