2024年ブロックチェーン活用事例──5分野から見える実用化元年
RWAトークン化
2024年9月にバイナンス・リサーチ(Binance Research)が発表したレポートによると、実物資産(RWA:Real World Asset)トークンの市場規模は過去最大の約120億ドル(約1兆8300億円)に達した。この⾦額には、先述のステーブルコイン市場は含まれていない。 代表的な事例が、世界最大の資産運用会社ブラックロック(BlackRock)による「BUIDL」の展開だ。このトークン化米国債ファンドは、イーサリアム上で取引可能で、3月の発売からわずか4か月で、トークン化国債商品としては初めて時価総額5億ドル(約760億円)を達成した。こうした機関投資家からの資金流入が、RWA市場全体を押し上げた。 一方、国内では不動産や債券を裏付け資産としたセキュリティ・トークン(ST)市場が、着実な成長を遂げている。ST基盤「ibet for Fin」をコンソーシアム形式で推進するブーストリー(BOOSTRY)が公開するマーケットデータによれば、公募ST発行総額は1470億円に達し、発行トークン数は50を超えた。特に不動産分野での活用が目立ち、レジデンス、ホテル・旅館、オフィスビルなど、多様な不動産案件のトークン化が進んでいる。 不動産以外だと、フィリップ証券が手掛ける映画『宝島』のST化が話題を呼んだ。総額13億円の映画製作費のうち約3億7000万円をトークン化し、1口10万円から投資可能な商品として一般投資家に提供した。投資対象は映画製作委員会への出資持分で、劇場配給、ビデオセル、放送権の販売等からの収益を投資リターンとする。 また、NOT A HOTEL DAOは、国内初となるRWAプロジェクトのIEO(Initial Exchange Offering)を実施。ラグジュアリーなシェア別荘の利用権をトークン化し、NOT A HOTEL COIN(NAC)として発行することで、高級不動産市場への一般投資家の参入を可能にした。 2024年のRWA市場の発展は、実験段階から実用的な金融インフラとしての段階への移行を示している。しかし、この市場の実態を詳細に見ると、RWAの成長の大半はステーブルコインが牽引していることが分かる。RWAの時価総額に対してステーブルコインが占める割合は90%を超えている。