2024年ブロックチェーン活用事例──5分野から見える実用化元年
行政
続いて、行政分野におけるブロックチェーンの活用事例を見ていく。とりわけ分散型ID(DID)の実装において、複数の画期的な取り組みが国内外で展開された。これまで実証実験レベルに留まっていた取り組みのいくつかが本格運用へと移行し、行政サービスのデジタル化における中核技術としての地位を確立し始めたものもある。 海外では、米カリフォルニア州自動車局(DMV)がアバランチチェーンで4200万枚の自動車登録証をデジタル化した。これによりDMVのアプリケーションを通じて自動車登録証の請求や移転手続きが可能となり、従来2週間を要していた車両所有権の移転手続きが数分に短縮される。 アルゼンチン・ブエノスアイレス市は、ブロックチェーンベースのデジタルID「QuarkID」を導入。現地メディアの報道によると、市民360万人を対象とし、ZKsyncが提供するEraレイヤー2ブロックチェーン上でゼロ知識証明を活用。市の公式デジタルプラットフォーム「miBa」と連携し、各種行政サービスや文書へのアクセスを可能にした。 国内では石川県加賀市が、マイナンバーカードと連携したWeb3ウォレット管理機能を持つ「e-加賀市民証NFT」の本運用を開始。これは「マイナンバーカードを活用した公的個人認証をオフチェーンで管理するWeb3ウォレット」として全国初の取り組みとなった。能登半島地震の被災者支援も含めた包括的な市民サービスのデジタル化を推進している。 民間主導の取り組みとしては、パートナーシップ証明書をブロックチェーン上で発行するファミー(Famiee)の事例がある。千葉県市川市・木更津市、宮崎県日南市など複数の自治体と協定を結び、行政サービスとの連携を実現。公的機関と民間のブロックチェーンプラットフォームの協調モデルを示した。 これらの事例は、行政分野におけるブロックチェーン技術の実装が具体的な形を見せ始めたことを示唆している。加賀市のマイナンバー連携や、ファミーと自治体の協定にみられるように、既存の行政システムとの統合が進展している。同時に、データ保護やプライバシー確保など、実運用における具体的な課題も明確になっている。 また、自民党web3PT座長だった平将明議員がデジタル大臣に就任、同時に行財政改革大臣も兼ねており、行政へのブロックチェーン活用が期待される。