大事なのはSNSより現実社会ですから──プロボクサー那須川天心が語る「世間の声」との向き合い方 #今つらいあなたへ
「ちゃんとした異物でありたい」
人は批判の目を向けられると多少なりとも心にさざ波が広がるものだ。 SNS社会において試合で結果が出るアスリートに対する誹謗中傷は、先のパリ・オリンピックでも問題視された。那須川とてプロボクシングに転向してから、受け入れられていない一定数のアンチファンはいるという。 デビューから2試合連続の判定決着に「パンチ力がない」「KOできない」などと、マイナス面ばかりを強調する見方もSNSを通じて那須川の目に入っている。だが彼はアンチファンを突き放そうとしない。前回の試合でロドリゲスを倒した後、リング上で「KOできないって言った人誰ですか?」とジョーク気味にアンチを触っている。 「ふざけるなよって言うのも違うと思うんです。おもしろおかしく、なんやねんみたいな。アンチの人も、アイツおもろいじゃんみたいになればいい。突き放すよりは巻き込んだほうが絶対にいい。その姿勢は大事にしています。自分は“異物”だと理解しているし、別にそれでいいんです。ボクシングのルールに則った、ちゃんとした“異物”でありたい」
「誹謗中傷をゼロにするのは無理」
26歳にしての達観。それもこれも幼少の頃に空手を始めて以降、格闘技の世界にどっぷりと浸かってきたからこそたどり着いた境地なのかもしれない。 「キックでデビューしたのが15歳。人前に出ていって、最初はなんでこんなこと言われなきゃいけないんだろうって思ったこともありましたよ。でも自分の力量次第で全部変わるんだって。それに経験していけば、いろいろな考え方にもなりますよね。人前に出る以上、良いこともあれば悪いこともある。僕は批判があることも覚悟のうえだし、そういったものと共存していかなきゃいけないのかなって」 そんな那須川にもSNSの誹謗中傷に、怒りをぶつけた経験がある。2022年6月、東京ドームで開催された武尊との「THE MATCH 2022」に勝利した後日のことだった。 <SNSが怖くて人の前に立てない人もいる SNSの誹謗中傷のせいで若い芽や可能性が沢山潰されてる エンターテイメントが出来なくなってる> <俺の事が好きな人、俺のファンでいてくれる人はわかってほしい(中略)俺はいくら言われても大丈夫だから 大きな心を持って生きてほしい 良い世界になりますように> などと自身のSNSに綴ったのだ。