日銀・黒田総裁会見4月28日(全文2完)好循環下で2%目標の安定的実現を目指す
金融緩和を粘り強く続ける
黒田:それはそういった誤解は解かないといけないと思いますし、そんなことにはなってないというふうに思っております。で、そもそも最近の物価情勢、物価状況っていうのは、ウクライナ情勢を受けた世界的な資源価格の上昇が主因でありまして、資源輸入国であるわが国の経済にとってはむしろ下押し要因になりますので、そういった点では日本銀行と政府の間で基本的な認識の違いはないというふうに思っております。ですから、こうした状況の下では経済活動をしっかりと下支えをすることが何よりも重要ですので、日本銀行としては金融緩和を粘り強く続けることで、企業収益や賃金の増加を伴う好循環の下での2%目標の安定的な実現を目指していくということであります。 一方、政府は3月上旬に原油価格高騰に対する緊急対策を実施しておりまして、一昨日も新たにコロナ禍における原油価格・物価高騰等総合緊急対策を検討して、決定しておられます。で、これらの対策は、ガソリン補助金や低所得世帯への給付金等を通じて、エネルギー価格の上昇が国民生活や企業活動などに与える悪影響を緩和して、景気の下支えに貢献するものというふうに理解しておりまして、政府と日本銀行で認識が異なるとか、あるいは政策が異なるということはないというふうに、むしろ相互補完的な政策だというふうに考えております。
市場と対話しつつ政策修正を準備する手法が使える政策か
日本経済新聞:日経新聞の清水と申します。よろしくお願いいたします。日銀が再三にわたって金融緩和政策を維持する意思を強調しているにもかかわらず、市場には総裁もおっしゃるとおり、政策修正を巡る臆測、観測が消えない背景として、この長期金利操作に関する政策の変更っていうのはなかなか事前に、市場に織り込ませる手法が使いにくい点があるというふうに指摘されます。短期金利操作や量的緩和と違って長期金利を操作対象にする政策の場合、事前に政策修正に関する情報発信を、それ、すぐに操作対象である長期金利で変動してしまう、上がってしまうという事情があるということなんですが、イールドカーブ・コントロールっていうのは前もって円滑に市場と対話をしつつ、政策修正に向けて準備していくという手法が果たして使える政策なのかどうか、その点についての総裁のお考えをお聞かせください。 黒田:なかなか理論的に難しいご質問ですけども。むしろ短期金利だけを政策手段として、長期金利は一切タッチしないという政策のほうが、短期金利を操作することによって期待、短期金利の将来の動きの期待が変わって、長期金利が変わるということなんでしょうけどもそちらのほうがむしろ、マーケットがどういうふうに捉えたらいいのかっていうのは簡単ではないんで、そちらがよりマーケットとのコミュニケーションがスムースだということも言えないと思います。 それから、欧米もわが国と同じように長期国債とかリスク資産の買い入れっていうのをやってますので、それは明らかに長期金利をコントロールしようということでやっておられるわけですので、長期債の買い入れを減らしていくとかいうことも、やはり長期金利に対するコントロールっていうものをしてるわけですので、それを変えていくことがマーケットにどういうふうにそれを取られるかっていうのは、そんなに簡単ではないと思うんですね。 だから、何かイールドカーブ・コントロールだと特にマーケットとのコミュニケーションが難しいとか、その調整が困難になるということはなくて、短期金利プラス長期債の買い入れという欧米の政策と、もともと長短金利操作付き量的・質的金融緩和っていうのの前は、短期金利と長期債等の買い入れという欧米の中央銀行と同じようなことをやってわけですね。その中で、むしろ経済に最も適切なイールドカーブを実現するためには、直接的に長期金利の目標を定めて、それに必要なだけの長期債の買い入れを行うということで。