「暇じゃねーんだよ!」亡父が契約した「メガバンク貸金庫」を開ける手続きに怒るパンチパーマの息子、1カ月後にようやく開扉し「まさかの宝」に号泣…
● 預金担当課長の異動時に 引き継がれる「臍の緒」 預金担当課長が、異動で新たな支店に赴任する際、貸金庫に関する引き継ぎは極めて重要となる。自分の在任期間中に内容物を紛失したなどあってはならないため、念入りに「内容物目録」を確認する。貸金庫の保管物を銀行が知ることは、通常できない。だが、特別なケースにのみ、貸金庫の内容物目録という書類が作成されるのだ。これについては、後半で詳しく説明しようと思う。 【この記事の画像を見る】 私がかつて在任した支店では、時折「臍(へそ)の緒」と書かれた内容物目録が目に入り、今でも印象に残っている。生まれた時に母体の胎内で繋がっていた、あの臍の緒である。金持ちになろうが、そうでなかろうが、財産がどうであろうが、産んでくれた母親と繋がっていた唯一の証として、貸金庫の利用者が何より大事にしていたのかも知れない。長らく保管された内容物目録を確認すると、なんとも切なく感じることがある。 最近、とあるメガバンクで利用客の貸金庫から多額の金品が盗まれた事件が発覚し、大きな話題となった。貸金庫を担当する管理者による犯行だと報じられている。私も同じ業務に携わる身であり、今回の報道は決して他人事とは思えない。 そもそも、銀行員による横領や窃盗、詐欺などの巨額不祥事は今回が初めてのことではない。 「その手があったのか…」 不謹慎なようだが、犯行手段が明るみになるたびにそう思う。だが、銀行員がお客の金に手をつけることなど、あってはならないことだ。やろうと思えばできてしまうが、それをやらないのは、ピストルを持っていても人を殺さない警察官や自衛隊員と同じではないか。治すのが面倒だと患者を殺めてしまう医者はまずいない。倫理観を持っているからこその話である。 お客の金に手をつけたら終わり。 誰しもが思っている聖域を守ってきたからこその銀行業界が今、揺らいでいる。
● 「うるさいな!貸金庫に入れるんだよ!」 お客が銀行に保管物を話してしまうケースとは 「おたくの銀行でさ、貸金庫借りてるんだけど、どうかしら?おたくの行員さんも盗んだりしていない?」 そんな電話が増えている。当行は事件を起こした銀行とは違うのだが、銀行そのものが信じられない存在になっているようだ。この手の電話は、おおむね最後にこのような捨て台詞を吐かれる。 「どこもみんな同じようなこと、やってるんじゃないの?」 そう思われても仕方がない事件だった。被害に遭った貸金庫には現金や貴金属が入っていたというが、内容物目録を作成するなどの特別なケース以外、銀行は保管している内容物を知り得ないはずだ。なぜ金目のものがあると分かったのか。それは、今後の銀行による調査や捜査当局の調べによって分かるだろう。 一方、多額の現金を預金口座から引き出す際に、貸金庫での保管に切り替えることを理由にするお客もいる。ただしこの場合、窓口はしつこいほどに利用用途を訊ねていく。マネーロンダリングを封じるためである。口座を通じた現金の移送は記録が残るため、犯罪が絡む場合は現金そのもので受け渡しを行う。そこで銀行としては、なぜ多額の引き出しが必要なのか、納得できる理由が必要となるのだ。 「何に使おうがあんたらに関係ないだろう?俺の金なんだから、俺の勝手じゃないか!」 「多額の現金を引き出す際には、理由や使用用途を確認するよう警察や金融庁から指導されております。何卒ご理解、ご協力をお願いします」 「リフォームするんだ」 かなりの割合で「リフォーム代」という答えが返ってくる。話を聞き進めるとリフォーム業者は決まっておらず、すぐに支払えるよう家に置いておくためだと言う。「リフォーム業者が決まった際、振り込みにすると手数料がもったいない」「再度銀行に行くのが面倒」といった具合で、銀行としては記録に残せないような理由ばかりである。工務店に数百万円も現金で渡すなど、よほどの事情でもない限り考えられないからだ。 「多額の現金を持ち歩いたり、自宅で保管するのは危険だと思いますので、私が工務店に交渉しましょうか?」 こういった提案は、どうやらお客にとってはありがた迷惑のようだ。 「うるさいな!貸金庫に入れるんだよ!」 「はい?」 「おたくの貸金庫だよ!それなら文句ないだろ?あんたらがさ、そうやって警察みたいに詮索してくるの、腹が立つわ。おたくとは2度と話したくないから、貸金庫に入れて好きな時に自由に出し入れするわ!」 そういうことではなく、こちらは使用用途を聞きたいのだが…。 ただし、ちょっとした残高を口座に残しておくと、投資信託などの勧誘セールスがうるさいから貸金庫に移す例もあり、その理由はさまざまだ。また、このように「貸金庫に現金を保管する」と銀行側に話してしまうお客がいるのも事実である。