なぜ五輪代表は同じチームコンセプトのA代表に完敗したのか?
今年1月に王者・川崎からポルトガルへ新天地を求め、攻守両面で 成長のスピードをさらに上げた守田はこう振り返り、さらに「思った通りの試合展開だった」と続けた。 「立ち上がりに先制したことで、U-24代表の方が少し面を食らうような形になった。ただ、上手い子たちが多いので、前半の途中くらいからボールを持たれ始めましたよね」 それでも前半41分に鎌田が、後半7分には途中出場のFW浅野拓磨(無所属)が追加点をゲット。守る側にとって危険とされる、前後半の開始直後と前半終了間際にゴールネットを揺らした展開は、五輪という大舞台へ臨む“弟分”へのエールにも映った。 後半33分からDF 板倉滉(フローニンゲン)に代わってU-24代表のボランチに入り、オーバーエイジのなかでただ一人プレーした遠藤も「非常にいいレッスンになった」と、プレッシャーのかけ方や仕掛ける時間帯、プレスのスピードなどが統一されていたA代表に感謝している。 「A代表のように連動した、ポジティブな雰囲気をU-24代表のピッチに落とし込んでいくのは、オーバーエイジである自分の仕事だと思っている。プレー面だけでなくメンタル面でも、これから積極的にコミュニケーションを取っていきたい」 実際、遠藤はすぐに相手の攻撃を潰し、的確にパスをさばく攻守の起点になった。 投入からわずか2分後の後半35分には遠藤からMF堂安律(ビーレフェルト)、MF相馬勇紀(名古屋グランパス)と縦パスが開通。右サイドへはたかれたボールを攻め上がってきたDF菅原由勢(アルクマール)が絶妙のクロスに変え、前田大然(横浜F・マリノス)と林大地(サガン鳥栖)の両FWが飛び込む惜しい場面があった。 つい最近まで遠藤や酒井、吉田とともに戦い、能力や周囲に与える影響力の高さを知り尽くしているからこそ、大迫は「まったく問題ない」と心配無用を強調した。 「あの3人が入るとまったく別のチームになる。だからこそ、オーバーエイジなんじゃないですか。しっかり違いを作れる選手たちが後ろに3人いることで、チームに安定がもたらされる。そこは期待したいというか、期待していいと思います」 一夜明けた4日に、A代表は7日のタジキスタン代表とのカタールワールドカップ・アジア2次予選(パナソニックスタジアム吹田)へ向けて大阪に、U-24代表はU-24ガーナ代表戦へ向けて福岡に移動する。再び別々の活動を開始するなかで、冒頭で記した厳しい指摘は期待の裏返しだと言わんばかりに、森保監督はこんなエールを送った。 「若い選手たちは短期間で一気に変わる。今日でかなり刺激を受けたと思うので、今回の活動期間で変わった、というところを横内さんやスタッフに見せてほしいし、私も映像でチェックします」 当初の予定を急きょ変えて向かった札幌で露呈した物足りなさは、イコール、若き日本代表に残された伸びしろにもなる。完敗を喫した悔しさを介して支払った授業料を、メダル獲りへの期待値に変えるための競争が、いよいよクライマックスを迎える。 (文責・藤江直人/スポーツライター)