なぜ五輪代表は同じチームコンセプトのA代表に完敗したのか?
簡単に与えてしまった右コーナーキック。MF鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)が供給したボールを、ニアでFW大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)がコースを変え、ファーへフリーで飛び込んできたMF橋本拳人(ロストフ)が左足ボレーでゴールネットへ押し込んだ瞬間、時計の針はまだ1分を10秒ほど回ったばかりだった。 「試合に慣れるまでちょっと時間がかかり、その間はA代表のプレーの強度の方が高かったという点で、少し後手を踏んでしまった印象がある」 本来はA代表のヘッドコーチとして森保監督を支え、活動が重複する期間はU-24代表を率いる横内昭展監督が、電光石火の先制点で流れを握られた展開を振り返った。 「A代表に関わっている選手がU-24代表にも数多くいるので、クオリティー自体は持っている。それでも強度が高く、さまざまなプレッシャーがかかる状況でプレーするところでは、A代表の選手の方が経験で少し勝る部分があるのかな、と」 5日にU-24ガーナ代表との国際親善試合(ベスト電器スタジアム)へ臨む日程を考慮して、オーバーエイジとして加わったDF吉田麻也(サンプドリア)、DF酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)、MF遠藤航(シュツットガルト)をリザーブとした。 今月下旬には東京五輪本番へ臨む代表メンバー18人が正式に決まる。27人を数えるいま現在のU-24代表から9人が外れるが、オーバーエイジの3人は当確のため、東京五輪世代だけに限れば24人が「15」の代表枠を争う構図となる。 異例の“兄弟対決”には、当落線上にいると思われる選手も何人か先発した。たとえば所属するシントトロイデンで右サイドバックを主戦場とし、この夜はセンターバックでプレーした橋岡大樹は前者で酒井、後者では吉田がオーバーエイジで参戦してきた。 「僕たちも試合前から『勝ってやるぞ』と気合が入っていましたが、まずは後ろが土台を作るという部分で、早い時間帯で点を決められてしまうとサッカーも変わってしまう。そこはもっともっと気を引き締めていかなければいけない」 こう振り返った橋岡に象徴されるように、U-24代表のモチベーションは高かった。しかし、エンジンがまだ全開にならない、キックオフ直後の時間帯に照準を定めたA代表の選手たちはしたたかに、明確な意図をもってプレッシャーをかけてきた。 「プレーの強度や球際の競り合い、攻守の切り替えの速さといったところでは、僕たちの方が優位に働くんじゃないかと個人的には考えていました」