10ー0大勝でW杯アジア最終予選進出決定も吉田麻也が実力差大きい2次予選方式に「クエスチョン」と問題提起
デジャブを感じさせる光景だった。無観客のフクダ電子アリーナで、攻撃の手をまったく緩めない日本代表にどれだけ突き放されても、国内情勢が不安定ななかで主力選手を欠きながらもチームを編成したミャンマー代表が必死に食い下がる。 それでも後半アディショナルタイムには、センターバックとして先発フル出場した東京五輪世代の24歳、板倉滉(フローニンゲン)が出場5試合目にして嬉しい初ゴールをゲット。得点を2桁に到達させてほどなくして、試合終了を告げる笛が鳴り響いた。 10-0で圧勝した日本が2試合を残してアジア最終予選進出を決めた、28日のカタールワールドカップ・アジア2次予選第6戦。FW大迫勇也(ヴェルダー・ブレーメン)のハットトリック達成を含めて、無観客のフクダ電子アリーナで3月30日に行われ、日本が14-0で大勝したモンゴル代表との同第5戦をほうふつとさせる展開となった。 「まずはアジア最終予選へ進む権利を手にしたので、そこはひとつよかった。後半に代わって出た選手たちも強度を落とさずにプレーを続けて、大量得点を取れたことも大事ですし、残る2次予選の2試合でも緩めることなく続けていってほしい」 4点のリードで迎えたハーフタイムに、DF植田直通(ニーム・オリンピック)と交代。お役御免の形でピッチを後にしたキャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)は、終わったばかりの90分間をポジティブに受け止めながら、2試合続けて2桁ゴールを奪い、守っては危なげなく零封した2次予選のあり方そのものへ疑問を呈した。 「ミャンマーもモンゴルも90分間を通して非常にポジティブで、自分たちが成長しようというあきらめない姿勢も見られました。見られたんですけど、そこであまりにも(実力的に)差があると、本当に有意義なものになるのかは個人的にはクエスチョンです」 吉田の問題提起には伏線があった。ミャンマー戦前日に実施されたオンライン対応。5戦全勝、総得点27、無失点の圧倒的な数字で2次予選のグループFの首位を独走し、最終予選進出へ王手をかけている日本の立ち位置を踏まえながら、吉田はこう語っていた。 「個人的な意見を言うと、この予選が正しいかどうかはちょっとわからない。僕たちにできることは残り3試合もいい試合をして、たくさん得点を取って、この予選がアジアの上のチーム、下のチームの両方にとってプラスになるかどうかの問題提起を、AFC(アジアサッカー連盟)へ投げかけていけたらいいなと。コメントしづらいですけど」 決してグループFの対戦国を見下しているわけではない。必死で向かってくる相手への敬意を込めて、日本としても全力でぶつかってきた。一方で世界におけるアジア勢の立ち位置を考えたときに、現状のワールドカップ予選のレギュレーションのままでいいのか、という疑問が頭をもたげてきた。ミャンマー戦前日に吉田はこう続けた。 「もちろん下のチームの底上げは大事です。特に東南アジアのチームはどんどん強くなっていると個人的には感じますけど、アジアが世界のレベルに到達することも大事です。世界大会でアジア勢が結果を出すためには、何をしなければいけないのか。日本だけでなくアジア全体で考えることが、アジアのレベルアップにとって大事じゃないか、と」