第163回芥川賞受賞会見(全文)遠野遥さん「受賞がなんかのゴールではない」
今までの青春を封印するとの思いがあったのか
読売新聞:どうも、読売新聞の鵜飼といいます。今の質問との関連ではありますけれども、先ほど写真撮影のときに文藝春秋の代表カメラマンが、ちょっと笑顔でというPRがあったんですけども、終始一貫、白い歯がこぼれなかったんですけども。 遠野:いや、私としては笑顔のつもりでやってたんですけど、そうは見えなかったですかね。それは残念ですけど。 読売新聞:そうでしたか。今日、吉田修一選考委員が、主人公というのが、ある種、一方で、社会のマナーに対して神経を使いながら、一方で行動というのが一致していないところが面白いってあったんですけど、白い歯を見せないとか笑顔をしないっていうのが、独特の、作者によるマナーなのかなとも思ったりしたんですが。 遠野:いや、そんなことはないです。笑ってるほうが、感じがいいですよね。だから。 読売新聞:じゃあ今、マスクの下には笑顔が。 遠野:そうです。 読売新聞:ちょっと見せていただけます? 遠野:いや、ちょっと、ウイルスとかあるんで。 読売新聞:そうですか、分かりました。それからもう1つお伺いしたいんですけども、ある種、舞台は、慶應大学とは書いてませんけども、僕は知らなかったんですけど、ぎんたまっていうのはなんかすごい有名みたいですね。 遠野:ん? 読売新聞:ぎんたまっていう。 遠野:ああ、はい。 読売新聞:僕は知らなかったんで、わざわざ調べたら本当にあるんだと思ってびっくりしたんですけども、ある種、ご自身の経歴を見ると、ご自身、三田とあって、法学部とあって、【スゴイ**** 00:38:24】も含めて、ある種、ご自身の青春時期を舞台に、しかもあえてご自身の経歴とダブるようにして、慶應というか、三田っていうのを舞台にして書いたことを、もちろんさっきのお話では、フィクションではありますけども、したっていうことと、ある種、青春時代のことを書いたっていうことが、ご自身としては青春時代を華やかに封印しようと思ったのか、それとも小説を書くことによって、ちょっと読んでみると第二の青春を出発させてやろう、みたいな感じの気概も感じたんですけど、その辺りの意図をお伺いできればと思います。 遠野:なんでしたっけ。小説を書くことによって、第二の青春を、とか。 読売新聞:いわゆる、今までの青春を封印して、これからの自分の文学的青春を開いてやろうじゃないか、みたいな。 遠野:いや、そのようなことは一切ないです。