第163回芥川賞受賞会見(全文)遠野遥さん「受賞がなんかのゴールではない」
自身の経歴とダブらせるように書いた狙いは
読売新聞:あと、いわゆる三田という、慶應というかご自身の経歴とダブらせるように書いたっていうのは何かあったんでしょうか。 遠野:いや、自分がその大学の出身なんで、その大学が一番書きやすいし、特にあえてほかの大学にする理由もないので、そこは特に、ほかの候補とかは考えませんでした。 読売新聞:分かりました。最後にもう1つ、芥川賞というのは芥川龍之介の名前に関した賞ですけども、これまでご自身が書く上で影響を与えたり、目標にしている作家があれば教えていただければと思います。 遠野:影響を与えた。過去の受賞作でっていうことですと、影響か。 読売新聞:目標でも。 遠野:目標。 読売新聞:【******** 00:40:21】。 遠野:影響、目標。特に誰か、目標というのはまずないです、そこははっきりしています。影響っていうことだと、読んでいくうちに知らず知らずに影響は受けていくと思うので、特にこの人からっていうのは今、思い付かないですけれども、『コンビニ人間』とか、『限りなく透明に近いブルー』とか、『蛇にピアス』でしたっけ。『蛇にピアス』とかはすごい印象に残っていて、印象に残ってるっていうことは、なんらかの影響を受けているとも考えられます。 司会:ありがとうございました。ほかにもう1、2問とさせてください。じゃあ、前。お願いいたします。
これからどういう小説を書いていきたいか
日本経済新聞:日経新聞の桂です。遠野さん、おめでとうございます。今、目標というのは特にないということだったんですけれど、遠野さんご自身がこれからどういう小説を書いていきたい、どういう作家になりたいっていうお気持ちを聞かせていただけますか。 遠野:そんなに器用なタイプではないと思ってるんで、なんでもかんでも書けるっていうわけでは、そういう作家ではないと思ってます。なので、自分が書けるものを書いていこうと思っています。 日本経済新聞:例えば、今回の作品でいうと、すごく文体が印象的だなとも思ったんですけれども、そういった面で、表現の仕方であったりとか、こういうことを高めていきたい、みたいな思いはありますか。 遠野:文体が特徴だとかっていうのは、いろんな人から言われるので、耳に入ってるんですけど、そんなに変わったことをやってやろうっていうのは思ってなくて、わりと素直に、自然に書いたらこうなるっていうことなので、引き続き、こんな感じでいけたらと思ってます。 日本経済新聞:あとじゃあもう1つ最後に、遠野さん、先ほど歴史ある賞をもらえるのは意外だとおっしゃってましたけれど、芥川賞っていうものに対する印象、思い、それと自分を重ね合わせたときにどういったことを思いますか。 遠野:いつから始まったのかって、正確なところは分からないですけど、非常に歴史がある賞だっていうふうには認識していて、有名な作家さん、すごい有名な作家ですとか、すごい作家がたくさん名を連ねている賞だと思ってますので、そこに、末席に加われるのは非常に名誉あることだと思ってます。 日本経済新聞:その喜びを誰かに伝えたいとしたら、誰に伝えたいですか。 遠野:あまり喜びっていうのは、誰かに伝えるものではないっていうふうに認識してます。 日本経済新聞:ご自身の中で温める? 遠野:そうですね。 日本経済新聞:ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。じゃあ、最後の質問とさせてください。どなたかいらっしゃいますか。じゃあ、はい。お願いいたします。