第163回芥川賞受賞会見(全文)遠野遥さん「受賞がなんかのゴールではない」
自覚的に書いているのか
共同通信:ちょっと漠とした話、ご自身としては、今回はどの辺が一番大きかったというふうに考えていらっしゃいますか。 遠野:自分でというよりも、SNSとか、書評とか拝見していると、主人公の性格がちょっと変わってるっていうふうにいわれてるのをよく見ていまして、その辺りが作品に個性を与えたのかなというふうに思っています。 共同通信:そこはわりと選考委員の間でも、自覚的に書かれてるのか、あまり自覚せずに、ある種、ナチュラルに書かれているのかというような、書評が割れたみたいですけど。 遠野:全然、自分ではそんな変なキャラクターにしようとか思ってなくて、逆に、もう人によっては結構、気持ち悪いとか、共感できないとか、怖いとかおっしゃるんですけど、そんなふうに書いたんじゃないのになって思いますね。 共同通信:分かりました。 遠野:もう少し親しみを持っていただけたらと思います。 共同通信:分かりました。ありがとうございます。 司会:ありがとうございました。ほかにどなたか。じゃあ。
驚きはどれぐらいあったのか
朝日新聞:朝日新聞の山崎と申します。おめでとうございます。作品が芥川賞の候補に入ったときに、あまり驚かなかったというお話だったと思うんですけども、今回はそれと比べて驚きというか、そういうのはどれぐらいあったんですかね。 遠野:受賞が決まったときのほうが驚きましたね。自分でも、これがみんなに好かれるようなものだとは思ってなくて、人によっては気持ち悪いとか、全然好きじゃないとかっていう人が実際いると思いますし、私もそうだろうなって思いながら書いていた部分もあるので、そういう賞を、歴史のある賞をいただけるっていうのはちょっと意外でしたね。なので、候補になったときよりも受賞が決まったときのほうが驚いています。 朝日新聞:今、意外でした、というお話ですけども、うれしさのようなものは? 遠野:ああ、うれしさ。そうですね、ノミネートされると、結果が出るまで結構そわそわしてしまうんで、それをもう経験しなくていいっていうのはうれしいですね。 朝日新聞:受賞よりもですか。 遠野:え? 朝日新聞:受賞自体よりもそっちのほうがということですか。 遠野:受賞。まあ受賞、受賞できたほうがいいとは思います。 朝日新聞:ありがとうございます。 司会:ありがとうございます。ほかに。じゃあどうぞ、鵜飼さん。