高橋 巧選手 独占インタビュー「鈴鹿8耐、3連覇を達成したHRCファクトリーの真実:ライダー編」
第1スティントの重要性
そして決勝。高橋選手はスタートライダーだった。第1スティントは重要で、レース展開を左右するからだ。 「今年はYARTヤマハ(ニッコロ・カネパ選手)がトップで逃げて、それをTeam KAGAYAMA のDUCATI(水野 涼選手)が追って、ギリギリで抜いたりけっこうやり合っていた。(中盤まで3番手にいた高橋選手は)『この2台は危ないな』と思って後ろで見ていました。第1スティントは2ラップ(サイティングラップとウォームアップラップ)余計にあるからキツイ」(それで27ラップ走る) 「ストレートで全開にしなくて済むようにスリップストリームに着いて、コーナーではタイヤに無理させないようにする。最初の30分ぐらいは、そんな感じの方が僕は良いと思っている。でも、今年は思ったほどペースが上がらなかったので、10ラップ目にトップへ出たんです。一旦、前に出たら徐々に(2位以下が)離れていったんで、このペースでいいと判断しました」 ソフトタイヤを選択したことが原因でYARTヤマハが徐々に遅れ出した。高橋選手は10~14ラップまでトップだったが(3秒以上のリード)、14ラップ目の途中で水野選手にトップを譲っている。その直前にはセーフティカーが入るが(フルコースコーション)、僅か14~15秒で解除され、次に転倒があり部分的にイエローコーションですぐに解除と、混乱したコース状況だった。15ラップの高橋選手のラップタイムは2分17秒802。その1ラップ前(14ラップ)は2分07秒795だった。その後(16ラップ)は2分07秒802に回復してトップに返り咲いている。 「オフィシャルが素早く処理してくれたのは良いんですけど、せめてグリーンフラッグを出してほしかった。セーフティカーの表示は見ているので、ペナルティは受けたくない。それで(水野)涼が追い付いて僕を抜いてきたので、一応OKだなと確認できたからペースを上げました」 すぐに高橋選手は水野選手を抜き返した。2分07秒台で走りながら、高橋選手は冷静だった。そして、第1スティントで2番手に約10秒の差を付けた。 「もし、ヤマハやDUCATIが2分06秒台だったとしても、対応できましたよ」 名越選手の脱水症状により、予定外の最終スティティント=チェッカーライダーを託されたのも高橋選手だった。 「ポジティブに言えば、スタートにチェッカーと良い所取りなんですけど、『責任重大』とも言えますね(笑)。哲平は、今年の8耐では初めてのHRCファクトリーだし、トップを走っているプレッシャーは想像以上に辛かったのだろうと思います。しかも暑い時間帯に走っている。でも、先輩として言わせてもらえれば『暑さ対策のトレーニングをもっとしておこうよ』と」
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