夫が不倫して逃亡、子どもはがんに…押し寄せる試練も「救いの手」受け取らず 衝撃受けた日本のシングルマザーの過酷な実態
日本のシングルマザーはなぜこんなにも貧困にあえいでいるのでしょうか。今、ある日本在住の外国人監督が作った映画が注目を集めています。それは、『取り残された人々:日本におけるシングルマザーの苦境』(12月14日~20日、K’sシネマ新宿)。GDP(国内総生産)世界4位の経済大国なのに、シングルマザーの半数以上は貧困状態。「こんなことが日本で起きていいのでしょうか?」と疑問を投げかけます。外国人ならではの視点で日本社会が抱える問題点をえぐり取ったライオーン・マカヴォイ監督に詳しい話を聞きました。(取材・文=水沼一夫) 【写真】「これは尊い」 シングルマザーが受け取った息子からの手紙 実際の様子 ◇ ◇ ◇
夫が不倫して逃亡、子どもはがんに…押し寄せる試練も「救いの手」受け取らず
マカヴォイ監督はオーストラリア人の映像作家兼プロレスラーで、この作品が長編デビュー作です。国内、国際映画祭含めて17部門で受賞するなど話題を集め、11月にK’sシネマ新宿で封を切られると、満員日が続出。このたび、同所で追加上映が決定したほか、各地から上映の要請が届き、その熱は全国に広がりつつあります。 初来日は2000年の11月、19歳のとき。空手の練習が目的でした。翌年から住み始め、定住歴は約20年。最初は英語教師をしていましたが、映画関係の仕事の夢を諦めきれず、12年に退職。プロレスラーとして活動しながら15年に自身の映像制作会社を立ち上げ、日本の自治体や海外メディアからの依頼で外国人観光客向けの映像制作を引き受けるようになります。 「映像の力は本当にすごいので、どうしてもこの業界に入りたくて。仕事は外国人目線から撮っている動画ですね。いろんな国からの依頼も多いですし、インバウンド、外国人観光客向けの仕事が多くて、BBCのドキュメンタリーやNHKの仕事もいろいろやったんですけど、いつか自分の自作ドキュメンタリーを作りたいなと思っていました」 社会問題も扱っていたため、日本の華やかでない部分にも関心を持っていました。 なぜ、初の長編作品に「シングルマザー」というテーマを選んだのでしょうか。 「一番のきっかけは知り合いのシングルマザーから相談があったことですね。旦那さんが不倫して、お金を口座から盗んで逃げちゃったんですよ。さらに彼女の息子ががんになった。治療費が払えなくて、『じゃあ我々が元旦那さんのところに話に行きますよ』って言ったんです。そしたら、そのシングルマザーは『うんうん、1人でやります。1人で頑張ります』と。『国からサポートもあるから』と言っても、そこでも『1人でやる』と言うんですよね。あれ違うんじゃないのって気づき始めて、なんで手を差し伸べたのに、手を取らないのだろうと。なんで国に行かないのだろうと。その後、偶然かもしれないですけど、いろんなシングルマザーの話が耳に入ったんですよ。それで、よし、テーマはこれだと決めました」