東京の感染者急減は「積極的疫学調査」が減ったから? 尾身会長の見解は
東京都の感染者が急減したのは「積極的疫学調査」の縮小が原因?――。政府の新型コロナウイルス対策分科会後に行われた9日夜の会見で、記者からこんな質問が出た。 【動画】西村担当相と尾身会長が会見 宣言解除後の“リバウンド”を懸念
調査縮小は「感染減少の前から」
都内の新規陽性者の報告数は、政府が「緊急事態宣言」発出を決めた1月7日の2447人をピークに減少。2月9日は412人と3日連続で500人を下回った。こうした感染者の急減については、ネット上などで都が積極的疫学調査を縮小したことによる影響を指摘する声がある。 積極的疫学調査とは、感染経路や濃厚接触者を追跡する調査のことで、保健所が担う。分科会の尾身茂会長は「積極的疫学調査を最近少しずつ抑えてきた。特に都会中心に」と調査の縮小を認め、「積極的疫学調査がなかなかできにくいというのは、いま急激に(感染者が)減ってくる時期のすでに前から始まっている。多少関係しているかもしれないが、いま実際に報告されている感染数が減っているのは間違いない」との見方を示した。 さらに「東京都では検査数が増えている。その中で陽性率が減っている」「リンクの追えていない(感染者の)割合もここへきて少しずつ減っている」などのデータも挙げた。 感染が急拡大した局面では、感染者の数が保健所のキャパシティを超えてしまったため、積極的疫学調査を広範に行うことができなくなったと説明したが、いまは「ある程度下がってきている状況」(尾身氏)。 コロナ患者の入院調整などに臨床家が関与する体制をつくるなどして保健所の負担を軽減した上で、「感染レベルが低くなれば、積極的疫学調査を前と同じような形でやってもらえれば。それがリバウンド(感染の再拡大)を抑えるために大事だと思う」と調査が果たす役割に期待した。 尾身氏はこの日の会見で、緊急事態宣言を解除した後に感染を再拡大させないための方策として、▽感染拡大の兆候の早期探知と介入のために、感染リスクの高い地域での無症状者らへの広範な検査、▽高齢者施設での流行阻止へ向け、職員らへの定期的な検査、▽謝恩会や卒業旅行、花見を伴う宴会などを控える――などの対策を提案した。