アメリカの文豪アーネスト・ヘミングウェイが造船に携わった「美しき フィッシング ボート」。この船が 海の男たちを魅了し続けてきた理由とは?
図面もないところから、一から修復していった
―― TWENTYを日本に持ってきたのはいつですか? 吉原 2012年です。 ―― 先ほど、ボロボロの船だったっておっしゃっていましたが、日本に持って来てから修理したのですか? 吉原 もちろんです。 ―― ここまでキレイに修復するのに、どれくらいの期間がかかったのですか? 吉原 3年です。途中でエンジンが壊れたりもしましたし、それこそ全部やりましたね。 もちろん図面なんてないから、図面屋さんを呼んで、全部測って図面を作ってもらうんですよ。 ―― ちなみに、どれくらいの速度が出るのですか? 吉原 1回だけやったことがあるんですが、最高速で30ノット(時速55.56km)を超える。巡航で走ったら、だいたい21ノット(時速約39km)くらいかな。 ―― それが、船にとっては一番快適なスピードなのですね。 吉原 快適っていうか、船にとってはそれが一番いい。 エンジンが新しくなっても、例えば69年前のクルマでターンパイクを攻めないでしょ。 人間でいえば、心筋梗塞も治ったし、いろんなとこも治ったけど、骨粗しょう症だけは治らないみたいな感じ(笑)。何しろ、自分より年上ですから。 スピードを出したいならスピードボートを買えばいい。 でも、僕はこの船がいい。そういう感覚ですよね。
船は「歴史」を継いでいくもの
―― 現代の船よりもスピードは出せないし、メンテナンスも大変だと思いますが、この船に乗る「意味」を教えてください。 吉原 時間を楽しむ。 ―― この船に乗っていること自体を、楽むということですね。 吉原 この船には、何とも言えない雰囲気感とか時間の流れがある。 「木」ですから、ぬくもり感がありますよね。 型で造ってない。ひとつひとつ手で造ってますから、曲線がすごくキレイなんですよ。日本人じゃ、この曲線のラインは描けないだろうな。 ―― TWENTYが建造されて69年経ちますが、その間にオーナーは何度も変わり、巡り巡って吉原さんの手に渡ったのですね。 吉原 面白いでしょ。 誰が持つ、誰が持つじゃなくて、「そのひと時の間」を僕は持っているだけ。 ずっとオーナーではない。 この期間が吉原、このあとは誰がオーナーになったよねって、歴史を引き継ぐもの。 船は時代を継いでいくものなんです。
ヴィンテージの船は、今の船と違って「温かみ」があると吉原氏は語る。 アメリカの工場に行ったとき、「合わせたい人がいる」と誘われて事務所に行くと、初代オーナーの時代に船のキャプテンをしていた娘さんが遊びに来ていたという。 その女性から、「魚を釣ったのも、あの船(Three Rings)が初めてだった。遠いところにいる親せきに、今日、会っている気分だ」と、ものすごく喜ばれたというエピソードも聞かせてくれた。 日本では、「船」と言えば漁船のイメージが強いが、欧米では「船」が文化となって受け継がれていく。その姿は素晴らしいと感じた。
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